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399. レジオネラ菌と生活水汚染.5-20-2005.
 
温泉水のレジオネラ菌汚染状況
温泉水を介したレジオネラ菌による感染症は、以前から発生していたが、宮崎県日向市の温泉施設で295名が発症し、7名が死亡した集団感染事故が起こったことがありました。今年の5月にノルウェーのエストフォル州でもレジオネラ菌による集団感染事故が発生し、45名の患者のうち8名が死亡したとの情報を6月1日に権威筋から受け取りました。興味ある方は、http://www.promedmail.org/pls/pm/pm?an=20050602.1543
にアクセスしください。
温水プールのレジオネラ菌による汚染は、あまりみられません。ところが温泉は、循環式装置が取り入れらていることもあり、レジオネラ菌が検出されても珍しいことではなく、当たり前のようになっています。
 
日本感染症学会から発行されている感染症学雑誌に報告されているレジオネラ菌による温泉水の汚染状況ついて紹介します。
報告1.全国の49温泉入浴施設から採取した温泉の源泉と浴槽水についてレジオネラ菌の汚染状況を調べた。105検体のうち52検体(49.5%)からレジオネラ菌が検出された。レジオネラ菌の汚染が確認された温泉施設の90%では循環方式を採用していた。検出率の最も高かったのは、露天風呂(66.6%)であり、10〜1,000個(CFU/100ml)の菌数が検出されたものが67.3%と最も多かった。泉質のpHが1.8〜3.33で、SO2−の含量が780mg/L以上、HSiOの濃度が146mg/L以上である温泉水からはレジオネラ菌は検出されなかった(感染症学雑誌78:545-553,2004)。
 
報告2.全国47都道府県の温泉水についてレジオネラ菌の分離を試みた。全国の温泉水710検体のうち204検体(28.7%)からレジオネラ菌が分離された。レジオネラ菌は全国47都道府県すべての温泉水から分離された。分離率と温泉水のpHとの関係は、pH3.1〜7.5で34.8%と最も高く、次にpH7.6以上で24.8%であったが、pH3.0以下では4.9%と最も低かった。検出された菌数は、100CFU/ml以下が48.0%と最も多く、次に100CFU/ml台が34.8%、1,000CFU/ml台が14.2%と続き、10,000CFU/ml以上は2.9%であった(感染症学雑誌78:710-716,2004)。
 
この二つの報告に記載されている数値には若干違いがありますが、日本各地の温泉水には広くレジオネラ菌が生息していることを示しています。
 
報告3.温泉水中のレジオネラ菌の殺菌の試み
日本各地の温泉水がレジオネラ菌で汚染されているが、温泉水のpHが極端に低い温泉水のレジオネラ菌の汚染率は低いようである。そこで、泉質の異なる温泉水に殺菌セラミックを添加して殺菌効果を調べた報告があります。その概要は次のようです。
硫黄泉、塩炭酸水素泉、塩化物泉、冷鉱泉、鉄泉、硫酸塩泉、単純温泉、塩化物強塩泉、放射能泉の9種類の温泉水を用いて、殺菌セラミックのレジオネラ菌に対する殺菌効果を調べた。各温泉水にレジオネラ菌を添加し24時間後の菌数の低下を殺菌力として調べた。
24時間の曝露後にレジオネラ菌数が百分の一以下に低下する殺菌効果が認められた泉質は、殺菌力の高い順に塩化物強塩泉、単純温泉、硫黄泉、塩炭酸水素泉となった。塩化物強塩泉の殺菌力は抜群で検出限界以下となった。一方、塩化物強塩泉や冷鉱泉での菌数の減少は微弱であった。日本国内の温泉の90%を占める泉質の温泉水(単純温泉40%、塩化物泉29%、硫黄泉11%、塩炭酸水素泉7%)で殺菌効果が認められた(感染症学雑誌79:157-160,2005)。
 
雑菌を多く含む生活水から少数のレジオネラ菌を効率よく分離するには、幾つか異なる方法が用いられています。雑菌を殺しレジオネラ菌を高率に分離することを狙った方法に、サンプルの生活水に酸を加えてpHを2.2程度と極端に下げると、普通の細菌は15分で死滅することが多いことを利用した方法があります。レジオネラ菌は、pHが2.2程度であれば15分間程度の暴露条件では死滅しないとされています。それにもかかわらず、pHが3.0以下の温泉水からはレジオネラ菌は分離されなかったと報告されています。言い換えると生息しているレジオネラ菌数が少ないことを意味しているものと思われます。酸性の温泉水には多く生息しているものと私は漫然と思っていました。認識を改める必要があることを知りました。

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