409. 肥満(BMI)とCRP. 8-17-2005.
CRP とは
CRP (C-reactive protein、C反応性タンパク)は、肺炎レンサ球菌の細胞壁を構成しているC多糖体と反応するタンパクであることからこの名前で呼ばれます。このCRP は、肺炎レンサ球菌のC多糖体以外にも、細菌や真菌の菌体成分と結合してオプソニン作用を示すこともあります。また、CRP は、C多糖体やポリアミンとの相互作用を介して補体の古典経路をも活性化します。
CRP産生は、炎症に対するヒトの生体反応の1種で、色々な疾患により生じる感染や炎症により血中CRP 値は上昇します。動脈内壁の異常な脂質沈着は、心筋梗塞を誘発しやすいが、CRP 値上昇の原因となることもあります。
近頃は、細菌による感染のみならず、心疾患、炎症やガンの進行と平行して速やかに肝臓で産生され、血中に現れることから炎症や心血管系疾患の診断に利用されるようになりました。一部の患者においてCRP 測定が心疾患リスクの判定法として宣伝される理由がここにあります。
CRP 値は、心血管疾患のリスク因子として、これまで主に白人男性群などを対象として研究されてきた。そのため、CRP 値の推奨閾値は、アメリカ人における全体的な分布を反映していない可能性が伺えると、テキサス大学医療センター内科のA. Khera助教授らは述べています(J. Amer. Coll. Cardiology 46: 464-469,2005)。
肥満、性や人種で異なる?
心疾患リスクの主要な指標と考えられているCRP の血中濃度は、男性と女性、アフリカ系米国人と白人との間で大きく異なることが初めて明らかにされました。
テキサス大学医療センター内科のA. Khera助教授らは、CRP 値の性、人種による差について、30歳から65歳の男女2,749例を対象に調べました。その結果、肥満の尺度であるBMI(Body Mass Index)の高い患者ではCRP値も高いことを突き止めました。更に、男性より女性が、白人よりアフリカ系米国人の方が概して高いCRP 値を示すことも判りました。また白人女性のCRP 値はアフリカ系米国人男性よりも高値であったが、アフリカ系米国人男性における心血管疾患の発症率は、白人女性の場合と比べて異常に高いことが判りました。最も驚くべき所見は、アフリカ系米国人女性の約三分の二に相当する人のCRP 値は、米国疾病管理センター(CDC)が高いリスクと定義している閾値を上回っていたことである。
調査担当者達は、「今回の試験は、1集団の概要にすぎないが、白人女性のCRP 値がアフリカ系米国人男性、白人男性のCRP 値と比較して高いことが示された。白人女性の心血管疾患の発症率は低いので、CRP 値をどう利用するのが最適なのかなど疑問が生じる、これらの差が心血管障害の差となるのか否かの判定をしなければならないと述べています。
この調査報告では、肥満度とCRP 値との関係については、肥満の尺度であるBMI(Body Mass Index)の高い患者ではCRP 値も高いと述べ、深く論じられていません。しかし、性や人種間でCRP 値が異なるとの指摘には、大変に興味を感じさせられます。肝臓などでの薬物の破壊(解毒作用)や薬物の有効投与量などを含めて、体の大きさ、脂肪の付き方、BMIの大きさによる代謝の違いを把握する必要があるのかも知れません。日本人のCRP 値はどうなのでしょうか疑問を生みます。しかし、「404. 肥満とインフルエンザ」でも触れているように、肥満は大変なリスクファクターとなるようです。