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441. 小児の胃腸炎用ワクチン. 8-26-2006.
キーワード:ロタウィルス 経口ワクチン 胃腸炎 下痢症
 
ロタウイルスとは
ロタウイルスは、非常に珍しい形態のウイルスで、レオウイルス科に属し、11本に分かれている分節型の2本鎖RNAを二重の殻が包み、その外側にはスパイク状のトゲを持つ車輪状の構造をしている、ウイルス学的にも非常に珍しいウイルスです。
5才未満の子供の死因の5%ていどがロタウイルスの感染で、特に発展途上国では毎年70万人もの乳児が死亡しているといわれています。とくに乳幼児でのロタウイルスにより引き起こされる胃腸炎や下痢症は重症化しやすいので、下痢などの原因ウイルスで、経口感染を起こすウイルスとしては重要です。
世界的にロタウイルスによる感染の9割近くがG1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]の4種類の血清型(=抗原)のいずれかを持つウイルスによることが判っています。特にG4P[8]は、感染者の6割以上をしめる主要なウイルスです。重症ロタウイルス下痢症の発症は、生後6カ月から24カ月に集中し、しかも初回感染での発症で最も重症化するようです。
米国では毎年5才未満のロタウイルス胃腸炎が270万人も発症し、25万回の救急治療室の利用があり、7万回もの入院の原因となっています。日本国内では、6才までに子供二人に一人がロタウイルスによる下痢症で外来を受診し、うち約20人の一人が入院すると考えられています。1年間での入院患者数は、5万人から8万人と推定されています。
 
小児用経口ワクチンの完成
2種類のRotarix(G1P[8]の弱毒生ワクチン)とRotaTeq(G1〜G4とP[8]の5価ヒト-ウシ組換えの経口生ワクチン)について2件のぼうだいな臨床研究により、これらのワクチンの有効性が明らかにされました。世界的な学術雑誌New England Journal of Medicine(345:11-22,2006, 345:23-33, 2006, 345:75-77,2006)に報告されました。
 
Rotarixは、2003年8月から2004年3月まで南米の11か国とフィンランドで、生後2〜4か月の乳幼児63,225例を対象に二重盲検法で安全性と有効性の試験が実施されました。ロタウイルスによる重症胃腸炎への有効性は84.7%(P<0.001)で、ロタウイルス下痢症による入院が42%も減少しました。
一方、RotaTeqは、2001年から2004年に米国、中米、欧州の11か国で、生後6〜12週の乳幼児70,301例を対象に二重盲検法で安全性と有効性の試験が実施されました。ロタウイルスによる重篤な胃腸炎に対する有効性は98%で、ロタウイルスによる受診率が86%も減少したそうです。
「20年間にわたりこのワクチンの研究と開発に携わってきた多くの人々による努力がこの疾患の予防に結びつけることができた」と述べています。
 
 
下痢症で一番激しい下痢を起こすのは、多分「コレラ菌によるコレラ」と思われます。昔の教科書を開くと、コレラ患者(児)がコレラベッドと呼ばれるマットの真ん中に穴がある特殊なベッドに横たわっている写真が掲載されていました。その患者(児)の目はくぼんで落ち込み、赤ちゃんのお腹ですらへこんでいます。それは激しい下痢による脱水によるのです。重度のロタウイルスによる胃腸炎は、下痢、嘔吐、発熱と脱水などが診られると記載されています。脱水が進行すると命にかかわるのです。発展途上国での平均寿命が発展工業国より短いのは、乳幼児の死亡率が高いのも一因と考えられています。そのような意味からロタワクチンの開発は、「重症ロタウイルス下痢症」にとって朗報なのです。

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