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526. 旅行者下痢症の予防にプロバイオティクス. 6-2-2009.
キーワード:旅行者下痢症、抗菌薬、プロバイオテックス、コレラワクチン
 
旅行中に下痢を起こすリスクは国や地域によってきわめて高い。たとえば、ケニアやインドへの旅行では下痢の発現率が50%超、トルコやポルトガルなどの地中海諸国への旅行でも10〜15%に達しているとの報告もある。目的地について数日以内で下痢がはじまり、そのほとんどは3日以内に自然に治る場合が多い。
 
独ポツダムにあるフォン・ベルクマン病院の感染症科のThomas Weinke教授は、旅行を予定している患者に勧めるべき下痢対策について説明している(MT 5-21-09)ので、概略を紹介します。
 
ジャマイカへの旅行者三万人を対象にしたアンケート調査から、@氷入りの飲みものを口にした人は95%、Aサラダを食べた90%、B水道水を飲んだ80%、Cハンバーガーや露天でのアイスクリームを口にした55%に達していることが明らかになった。こうした現状を考えると、「皮をむいて煮るか調理する」または「食べない」という先人の知恵はあまり効果を期待できそうにない。
 
そこで考えられる別の方法が、感染予防を目的としたプロバイオテックスの摂取である。天然生菌酵母や乳酸菌などの摂取群は、下痢の発現率が対照群との比較で最大58%も低かったとのデーターも得られている。
 
一方、免疫抑制患者、特殊な薬剤の服用患者や慢性炎症性腸疾患患者などの高リスク群の有効な予防法は、コレラワクチンの投与であると考えられる。コレラ菌と腸毒素産生大腸菌(ETEC)の毒素のアミノ酸の相同性は80%であるため、コレラワクチンの経口投与は、ETECによって起こされることが多い旅行者下痢症をかなり予防できるという。
 
 
実際に下痢になってしまったら抗菌薬療法が費用効果の面でも優れている。しかしながら2日間の下痢を予防するために抗菌薬を2週間も事前に投与することは、耐性菌の誘導など色々な意味合いから一般には勧められない。そこでいま一番考えられているのが、プロバイオテックスの摂取である。プロバイオテックスについては、既に「514. プロバィオティクス. 12-28-2008.」で説明してあります。興味ある人は、こちらも参考までにお読みください。

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