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553. 染毛剤や喫煙と肝硬変との関係
キーワード:肝硬変、染毛剤、喫煙、アルコール飲料
 
マンチェスター王立病院のMartin I. Prince教授らは、染毛剤と喫煙はいずれも原発性胆汁性肝硬変リスクを高めるとの研究結果を発表した(Case?control studies of risk factors for primary biliary cirrhosis in two United Kingdom populations. GUT 59: 508 - 512, 2010)。その概要を以下に紹介します。
肝硬変に進行しうる原発性胆汁性肝硬変は、慢性の自己免疫疾患で、環境因子が重要な役割を果たすと考えられており、肝臓中の胆管の炎症、障害、消失から広範な組織の損傷を生じ、最終的には不可逆的な肝硬変に至るケースが多いとされている。

Prince教授らは、次の3群からなる対象を選び、調査研究を実施した。
1群.1997〜2003年に英国北東部で新たに原発性胆汁性肝硬変と診断された381例(疫学群)と、
2群.全国的な患者支援団体である英国原発性胆汁性肝硬変財団の会員3,217例中の2,258例の患者群
3群.選挙人名簿から無作為に抽出し、年齢や性をマッチさせた3,933例中2,438例の対照群であった。

3群に対して原発性胆汁性肝硬変に関連する環境因子や遺伝的危険因子について質問したところ、関節リュウマチ、甲状腺疾患、セリアック病などの自己免疫疾患が原発性胆汁性肝硬変に共通して認められた。乾癬の皮膚症状、尿路感染症、帯状疱疹があるケースも原発性胆汁性肝硬変と診断される可能性が高かった。喫煙経験について調べたところ、疫学群では原発性胆汁性肝硬変リスクが対照群と比べて63%と高かった。定期的に飲酒する者は、統計学的に有意でなく、アルコールが原発性胆汁性肝硬変の原因因子になる可能性は低いとされた。
染毛剤に対して質問したところ、使用していたのは男性回答者の1%未満で、女性では半数超であった。会員群の女性では原発性胆汁性肝硬変のリスクが対照群の女性に比べて25%も高かった。今回の研究結果に関連する染毛剤の成分は明らかに出来なかったが、これまでの研究からPBC、化粧品中の化学薬品、特に染毛剤とマニキュア液に使用されているオクチン酸との間に相関性が示されていると述べている。
 
アルコールを分解する酵素があまり強くない日本人が過度にアルコール飲料を摂り過ぎると、肝臓の機能が損なわれ、結果として肝硬変を発症することが多いと云われている。その反面、染毛剤や化粧品の類の生体への影響を調査する目的で、製造企業に商品の成分について問い合わせても最終的には「企業秘密」の壁に突き当たってしまう。しかし、268.染毛剤の人体への影響でも触れているように疑わしい薬品が含まれている可能性は高いようです。

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