◆赤パンかび [Bread red mold (mould),Neurospora]

 一般的には餅やパンなどの穀類食品によく生える赤色のかびで、分類上は真菌の中の子嚢菌類の核菌綱、ソルダリア目、ソルダリア科に含まれるニューロスポラ属(Neurospora)のかびをいう。多くは雌雄異株で褐色ないし黒色の被子器をもち、その中の円筒形の子嚢内に子嚢胞子をつくる。不完全世代もあり、その分生子が赤橙色で粉状の塊となって付くので赤色にみえる。このかびはしばしば、焼け跡の立木やトウモロコシの芯にも生える。赤パンかびの中でも、とくにニューロスポラ・クラッサ(N.crassa)については、1941年、G.W.ビードルとE.L.テータム(アメリカ)によって、その生化学的突然変異株が分離され、微生物遺伝学的な研究の結果、「一遺伝子一酵素説」が提唱されて以来、遺伝子の研究に微生物が使用されるようになり、この研究が分子生物学の発展の一つの重要な契機となった。

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