◆ハセップ
  [Hazard analysis critical control point: HACCP]

 わが国では「危害分析に基づく重要管理点方式」と訳され、ハサップ、ハシップなどともよばれている。この方式はアメリカの宇宙開発の一環として、宇宙飛行士のための安全な宇宙食を製造する過程で確立された食品製造上での管理方式が基本となっている。現在、世界各国できわめて多種類の食品(生鮮・加工食品)が製造・加工され、輸出入をはじめとする食品流通が行き渡っているが、周知のように世界的に種々の食品汚染が頻発して、衛生的にも経済的にも大きな問題を投げかけている。"ハセップ"とはこのような現状から、あらゆる食品の製造、加工、流通の各工程で発生する恐れがある微生物汚染をはじめ、有毒・有害生物や化学物質あるいは異物などの混入とそれらの危害を未然に防ぐために、欧米で始められ最近はわが国でも採用されつつある食品の分析・管理方法である。わが国では関係省庁(農林水産省、厚生省)の通達を受けて、ハセップの基準に基づいて、各食品毎に管理マニュアルがつくられている。わが国ではこの方式が未だ徹底されているとはいえないので、ハードとソフトの両面から本格的に軌道に乗せるまでには、かなりの期間を要するであろう。食品工業界の多くでは既に食品衛生管理が徹底しているが、今後はすべての食品が対象となり、ハセップ対応の証明書を添付したものでなければ、輸出入はもちろん流通や販売などで取り扱われなくなるので、関係業界ではその対応が急がれている。従来このような方式がほとんど実施されていなかった生鮮食品業界では、ハセップは今後の大きな現実的課題として地域ごとに指導・徹底されつつある。また、諸外国でもこの問題に対応するために、数年来わが国へも多くの公的機関の検査官や企業の技術者が国際協力事業団(JICA)を介して研修生として派遣され、食品添加物をはじめ重金属、魚毒、貝毒、かび毒など有害物質の分析や食中毒細菌の鑑別など技術面の研修のほか、各地の試験機関や企業の見学なども実施され、関係者がその指導に当たっている。

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