◆発光細菌 [Luminous bacteria]

 りん光細菌ともいわれ、ホタルやホタルイカが発光する仕組みと基本的には同様に、ルシフェリン(luciferin)とルシフェラーゼ(luciferase)をもち、アデノシン・三燐酸(ATP)のエネルギーを利用して青白色(波長490nm付近)の光をだす細菌である。ほとんどは好気性の海洋細菌で、まれに淡水性の発光細菌もあり、発光には酸素を必要とする。現在、国際的に認められている発光細菌はグラム陰性のビブリオ科に属するビブリオ属(4種)とフォトバクテリウム属(3種)の7種である。そのほかにドイツのエルベ川の水から分離されたビブリオ属のコレラ菌に似た細菌も発光するとされている。発光細菌の日本での研究も古く、20世紀初頭からはじまり、海水、死魚あるいは海産動物の発光器官から分離された。また、淡水性の発光細菌として、長野県の諏訪湖で発光病にかかったヌカエビから分離され、その後、千葉県の佐原地方の利根川水系の小川で発光病にかかったヌカエビからも分離された。この発光細菌はビブリオ・ヤザキイ(Vibrio yazakii MAJIMA)として報告されたが、この細菌もドイツのエルベ川の発光細菌にきわめて近い菌種であろうとされている。ちなみに佐原地方の発光エビはホタルエビと名づけられ、天然記念物(文部省)として保護されている。発光細菌は海水中、死魚や海産物(死物寄生)、魚類やイカ類の発光器官中(共生)、昆虫や甲殻類の体内中(活物寄生)に生息している。活物寄生の場合は発光病(光り病)ともいわれる。発光作用はルシフェリンがルシフェラーゼの存在下に酸素と結合してオキシルシフェリンと炭酸ガスが生成し、そのときに光エネルギーを放出する。

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