◆発酵食品 [Fermentative food]

 食品原料を微生物によって発酵させてつくられる食品。とくにアルコール飲料や乳製品はその代表で、世界的に古くからつくられてきた。周知のように、酒、焼酎、泡盛、ウイスキー、ブランデー、シャンペン、ウオッカ、ジン、ワイン、ビールなどの多種類のアルコール飲料は米、麦、とうもろこし、いも、そば、ぶどうなどを原料として、麹かび、黒かび、酵母などによって発酵させ、その分解産物であるエタノールを主成分とした飲料で発酵酒と蒸留酒がある。また、味噌、醤油、酢、味醂などの調味料は大豆、米などを原料として、かびや酢酸菌(細菌)によって発酵させた食品である。乳酸菌飲料やヨーグルトなどはおもに牛乳を原料として乳酸菌(細菌)によって発酵させたものである。"納豆"は大豆を通称「納豆菌」といわれる細菌の1種である枯草菌の1変異株で発酵させ、大豆タンパク質 分解で生じたアミノ酸がうま味成分になっているものである。魚介類の塩漬・発酵食品として、"いずし"などの"なれずし"とよばれる地方独特の食品がある。これは塩漬した魚介類を米飯とともに長期間漬け込んで、米(デンプン)の発酵で生じる乳酸などによって風味をつけ、保存性をよくした食品である。これには滋賀県の"ふなずし"、和歌山県の"さばなれずし"、秋田県の"はたはたずし"、東北地方や北海道の"いずし"が知られている。
"塩辛"は魚介類の筋肉や内臓に食塩を加えて熟成させることで、自己酵素や細菌の酵素で消化させる「あん醤品」で、"くさや"は独特の塩漬汁に漬けて乾燥させる「塩干品」で、いずれも発酵食品ではない。また、果実酒や薬用酒は種々の果実や薬用植物を焼酎などの高濃度のアルコール製品に長期間漬けてつくられるエキスであるから、真の発酵食品とはいえない。
発酵食品の中で、とくに"なれずし"のような魚介類の発酵食品はクロストリジウム属の細菌(ウェルシュ菌やボツリヌス菌)による食中毒をおこすことがある。昭和26年(1951年)に北海道や秋田県で"いずし"、"きりこみ"による食中毒事件が発生した。この時の原因はボツリヌス菌であったという。わが国でのこの種の食中毒は自家製の魚介類やその加工品によることが多いので、一般家庭ではとくに注意する必要がある。

関連 塩蔵食品
関連 乾燥食品
関連 缶詰食品
関連 燻製食品
関連 細菌性食中毒
関連 発酵
関連 麹かび
関連 黒かび
関連 酵母
関連 デンプン
関連 ウェルシュ菌
関連 ボツリヌス菌