◆硫黄酸化細菌 [Sulfur oxidizing bacteria]

 硫黄細菌ともいい、無機硫黄化合物を酸化して得られるエネルギーを用いて生育する細菌である。これには分子状の酸素で硫黄化合物を酸化する好気性の無色硫黄細菌と、二酸化炭素を電子受容体として硫黄化合物を酸化する嫌気性の光合成硫黄細菌の2群がある。 無色硫黄細菌には化学独立栄養性で糸状のチオバチルス(Thiobacillus)やチオスピラ(Thiospira)と、従属栄養性で糸状のベッギアトア(Beggiatoa)やチオスリックス(Thiothrix)がある。チオバチルスはおもに土壌に生息し、1本の鞭毛をもつ桿菌で、多くは偏性好気性である。チオ硫酸イオンや単体の硫黄を酸化するが、細胞内には硫黄顆粒がない。とくに、チオバチルス・チオオキシダンス(Thiobacillus thiooxidans)は硫黄温泉などに生息し、硫黄を硫酸にまで酸化するので、pH1という強酸性下でも耐性である。 一方、従属栄養性のベッギアトアやチオスリックスの多くは淡水や海水の底土(有機物が多い下水溝や海底泥)の表面に生息し、硫化水素や単体硫黄を酸化して、細胞内に硫黄顆粒をつくる。ベッギアトアなどはときに湾内の海水養殖生簀(いけす)の底泥で、多量の硫化水素が存在するとそれを酸化して生育するので、海底泥の表面を乳白色の膜状にすることがある。なお、ベッギアトアは色素を失った藍藻(藍菌)であるとの考えもある。

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