◆滑走細菌 [Gliding bacteria]
匍匐(ほふく)細菌ともよばれ、液体中では菌体を屈曲させて運動し、寒天培地のような個体の表面ではナメクジのようにゆっくり滑る(または這う)運動をして移動する細菌群をいう。この運動は鞭毛運動より著しく緩慢であるがその仕組みは不明である。典型的な滑走細菌は寒天培地上で広がった、周縁が不明瞭な集落をつくる。細菌の細胞表面が多糖から成る粘液質で覆われているので、細胞塊が移動したあとに粘液の軌跡ができることが多い。また細胞が集合する傾向が強く、液体培地中では凝集する場合や、分散して発育する場合もある。光合成をしない滑走細菌(従属栄養)はいずれもグラム陰性、好気性で、通常は桿状ないし糸状であるが、生活環の一つである球状の粘液胞子(ミキソスポア)をもつ特異な子実体をつくる細菌もある。非光合成滑走細菌には粘液細菌群とサイトファーガ群のほかに、糸状細菌や硫黄酸化細菌がある。また、光合成をする滑走細菌には緑色細菌と藍藻(藍菌)がある。ほとんどの滑走細菌には病原性はないが、魚類のカラムナリス病菌は例外的な病原菌である。
鞭毛
従属栄養
グラム陰性菌
好気性菌
粘液細菌群
藍藻
藍菌
病原性
多糖