◆魚類のイクチオボド症原虫 [Ichthyobodo necator]

 魚類に寄生するイクチオボド原虫はコスチア属とされていたことから、病名が"コスチア症"とよばれ、日本では1938年にコイやキンギョにこの寄生病が発生したが、その後はあまり問題にはされなかった。ところが、最近、養殖されているサケ科魚類、ヒラメの稚魚、トラフグにもかなり高率に発生して養殖業界で問題になってきた原虫病である。
症状はイクチオボド原虫が上皮細胞へ寄生して、この原虫特有の突起を魚の細胞内へ伸ばして、その栄養を摂取するので魚の細胞は壊死(えし)し、多数が寄生した場合には魚の上皮が広く崩壊して出血し浸透圧が異常になる。とくにこの原虫病が降海性のサケ科魚類に発生すると、魚は海水に適応できなくなり海へ降りた直後に大量に斃死(へいし)する。
イクチオボドは鞭毛虫類の中の動物性鞭毛虫類、キネトプラスト目のボド類の1属で、広く世界に分布して感染魚も多い。淡水性のサケ科魚類やコイでは上記の原虫種であるが、海水性のヒラメやトラフグでは同属の別種(Ichthyobodo sp.)である。虫体は比較的小さく(8-10μm)、2本の鞭毛で泳ぐ。その形は泳いでいるときは円形で、魚へ寄生しているときは紡錘型である。寄生する場合は付着盤で魚の細胞へ取りつき、原虫の口から突起をだして栄養分を吸いとる。とくに魚の鰓(えら)や鰭(ひれ)へ寄生しやすい。
治療にはホルマリンで薬浴する方法が有効であるが、その流出を避けるために飼育池などの閉鎖された場所に限る。また、魚へのストレスも間接的に大量斃死をもたらす原因になるので、過密な養殖は危険である。

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