◆魚類のカラムナリス病菌 [Cytophaga columnaris]

 カラムナリス病は1922年に初めてアメリカで温水性の淡水魚として報告され、古くは"鰓(えら)ぐされ病"とよばれていた魚病の一つで、その鰓(えら)に群がる黄色い細菌の塊が柱状(カラム状)をしていたことからこの病名がつけられた。その後、この魚病は遡河(そか)性のサケ科魚類にも大きな被害をもたらすようになり、さらに各種の淡水魚や汽水魚にも広がって、おもに北アメリカ、ヨーロッパ、ニュージーランドや日本に分布している。日本では最初ドジョウにみられたが、1965年頃からウナギの養殖が盛んになり、同時に配合飼料が多量に使用されるようになって、この魚病の被害も増加したといわれている。
症状の特徴はウナギではおもに鰓(えら)、ときには鰭(ひれ)が冒され、鰓(えら)では急性ないし亜急性の場合、病原菌の増殖にともなって粘液の分泌が激しくなり、鬱血(うっけつ)や出血がおきて短期間に死亡する。慢性ではじょじょに鰓(えら)の組織が壊死(えし)や崩壊をおこしてやがて死亡する。ほかの淡水魚では口唇部が冒されるが、普通は内臓に異常がみられないことから、直接水に接触した部分に限られて冒される1種の寄生的な病気と考えられている。
カラムナリス病菌は粘液細菌に近いが、長年その分類がはっきりせず、数回の改名を経て、現在、滑走細菌中のサイトファーガ科のサイトファーガ属の1種とされている。この細菌は淡水に常在する条件性病原菌で、グラム陰性、偏性好気性で黄色のカロテノイド色素(ゼアキサンチン)をもつ細長い桿菌(0.5×3.0-8.0μm)である。鞭毛はもたないが屈曲運動をし、固形物(寒天培地)の表面をゆっくり滑走することが特徴である。また、細胞は特有の粘液で覆われ、集合しやすい点も粘液細菌に似ている。一定の条件下では液体培地中で分散状に発育する。至適発育条件は25-27℃,pH7.5付近、塩分約0.5%である。この細菌はタンパク質を強く分解し、細菌を溶解(溶菌)するが、デンプンは分解しない。この細菌の血清型に4型があり、種共通の抗原(凝集素)をもっている。また、この細菌の病原因子については、多糖分解酵素(コンドロイチン ACリアーゼ)やタンパク質分解酵素が研究された。なお、サケ科魚類の冷水病菌や海産魚の滑走細菌症菌も同属またはそれに近い細菌である。

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関連 サケ科魚類の冷水病菌
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