◆魚類の細菌性鰓(えら)病菌 [Flavobacterium branchiophila]

 細菌性鰓病は最初アメリカでサケ科魚類の新しい"鰓病"として報告された魚病で、"栄養性鰓病"と区別してこの病名になった。この魚病は欧米や日本でサケ科魚類の細菌病の中で最も多発するものの一つとして知られ、日本ではおもにニジマス稚魚(4-5月)に多くみられていたが、近年はヤマメ、アマゴや放流用のサケにも発生して問題となっている。
病魚は初め餌を取らなくなり、病状が進むと多量の粘液によって鰓蓋(えらぶた)が閉じなくなり、鰓(えら)が鬱血(うっけつ)して腫れる。さらに鰓(えら)組織が細菌に覆われて、鰓薄板(さいはくばん)が癒着して鰓弁が棍棒化し、ついには呼吸が困難となって死亡する。この病気が発生する環境要因として、過密養殖、水中アンモニアの増加、溶存酸素の低下あるいは水中の浮遊物などが挙げられている。治療には5%食塩水への浸漬法、塩化ベンザルコニウムや過マンガン酸カリウムによる薬浴法が用いられている。
細菌性鰓病菌は初め粘液細菌(滑走細菌)の1種と考えられていたが、その後、日本で分離され粘液細菌ではないフラボバクテリウム属に分類・命名された。この細菌は水中に常在する条件性病原菌で、グラム陰性、偏性好気性の長桿菌(0.3-0.5×5-15μm)で、屈曲運動や滑走運動をしないが、淡黄色の菌体色素(カロテノイド)をもつことも特徴である。その発育は10-20℃で、塩化ナトリウムを加えない場合に最もよく発育する。また、この細菌はタンパク質やデンプンを分解する。血清型は分離株によって違い、共通の抗原と特異的な抗原が知られている。また、病原性については環境要因との関連も考えられているが詳しいことは不明である。

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