◆魚類の神経壊死症ウイルス [Nervous necrosis virus (NNV) of fish]

 魚類の神経壊死症はヨーロッパ(フランス、ノルウェー)、東南アジア(タイ、シンガポール)、タヒチ、オーストラリアと日本で海産魚に発生した。外国ではおもにバラマンディ(アカメ)、ヨーロッパ・スズキ、ハタ、ターボット(ヒラメの1種)などのウイルス病として報告されたが、日本では1980年代の後半からスズキ、ハタ、シマアジ、カンパチ、イシダイ、イシガキダイ、マツカワ(カレイの1種)、ヒラメ、トラフグなどに発生し、高級魚の養殖場で問題になっている。
症状は外観的にはあまり病徴がなく、一般に水面近くをふらついて泳ぎ、稚魚では旋回病と同じように回転、旋回して飼育池の底に沈む。死亡率も高く、病気の兆しがみえてから1-2週間後には全滅することもある。魚体内では中枢神経や網膜の神経細胞が壊死(えし)したり崩れて、大型の空胞ができる。そのような細胞の内外には多数の小型ウイルスの集団が存在する。
原因ウイルスが数種の病魚から分離された。その形は直径25-30nmの球状で1本鎖のRNAをもち、エンベロープ(外被)はないが、タンパク質からなるカプシド(外膜)をもっている。このような形や組成から、昆虫ウイルスとしても知られているノダウイルスであるとされている。産卵した親魚の生殖巣からこのウイルスが多数検出されることから、おもな感染源は親魚であろうと考えられている。したがって、ウイルスが確認されない親魚の選別がこの病気の発生を抑える有効な方法である。

関連 壊死(えし)
関連 エンベロープ
関連 タンパク質
関連 カプシド
関連 ノダウイルス
関連 旋回病