◆魚類の腎腫大症原虫 [Hoferellus carassii]

 腎腫大症は1965年頃から東京都のキンギョ養殖場でキンギョの腹部が著しく膨れる病気として知られていたが、その後、埼玉県下のキンギョ養殖場でも発生した。症状は原因となる原虫が腎臓の細尿管の上皮細胞に寄生して増殖するため、上皮細胞が増生し、細尿管が広がって腎臓が腫れる。その結果、腹部が異常に張れて泳げなくなり衰弱死する。この症状はキンギョのほかにフナにもみられる。
原因原虫はミクソゾア類の粘液胞子虫の1種で、紡錘型の胞子(長さ11-14μm)をつくる。胞子は両端に極嚢と後端部に7-10本のフィラメント(糸状体)をもっている。早春につくられた胞子は水中へ放出され、一旦、エラミミズ(交互宿主)の消化管内で数カ月間に放線胞子虫のネオアクチノミキソン(Neoactinomyxon;30μm)に変態してから、夏になるとキンギョへ寄生する。
予防法は飼育池をコンクリート製にして、エラミミズが生息できないようにすることであるが的確な治療法はない。ただし、抗生物質のフマギリン(ポリエン抗生物質)は栄養型原虫の発育を抑えるが実用的に用いられていない。

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