◆魚類の赤血球壊死症ウイルス [Erythrocytic necrosis virus (ENV) of fish]

 ウイルス性の赤血球壊死症は多くの海産魚や遡河性魚類の赤血球の核が崩壊し、細胞質内に封入体ができることが特徴である。最初、カナダの大西洋沿岸でとれたタラなど数種の海産魚に赤血球が融解する病気が発見(1969年)されて、当初は"魚類赤血球壊死症"とよばれていたが、その後、ブリティッシュ・コロンビア州沿岸で海面養殖されていたサケ、カラフトマスや天然ニシンにも同じ症状の病気がみられてから、ウイルス性赤血球壊死症とよばれるようになった。さらに、アメリカのワシントン州沿岸やオレゴン州の孵化(ふか)場でもサケとその他のサケ科魚類にこの病気が観察されたので、北太平洋のサケ・マス資源に重大な影響がでる可能性が懸念されている。最近、日本でも三陸沿岸や北海道のオホーツク海沿岸のサケにこの病気に似た症状が認められている。
原因ウイルスはリンホシスチス病ウイルスによく似たイリドウイルス科のウイルスと考えられている。その形は一般に直径310-360nmのきわめて大きい正二十面体でDNAウイルスとされるが、太平洋沿岸のサケなどにみられたウイルスの大きさは直径が190nmであり、大西洋ニシンのそれはさらに小さく、直径が146nm以下であったという。このようにこのウイルス病の病原体は数種あるとも考えられるが、まだそのウイルスが分離されていないので性状も確定していない。

関連 赤血球
関連 封入体
関連 サケ科魚類
関連 リンホシスチス病ウイルス
関連 イリドウイルス