◆魚類の赤点病菌 [Pseudomonas anguilliseptica]

 赤点病は日本では1971年に発生が報告された細菌性魚病である。かっては日本と台湾のみに発生すると考えられていたが、イギリスでもヨーロッパ・ウナギに発生し、ときにはドジョウ、アユ、ブルーギルにもみられる。やや塩分がある養殖池で発生しやすく、春先から初夏に流行する場合が多く、一般にウナギの魚病の一つとして重要視されている。
その症状の特徴がウナギの皮膚、とくに下顎(あご)、腹部または肛門周囲に多数のはっきりした点状の出血がでることでこの病名となった。また、鰭(ひれ)や肝臓、脾臓、消化管にも発赤、出血、貧血などがおこる。皮膚、循環器や結合組織で病原菌が増殖するが、実質細胞や組織にはその増殖がほとんどみられないことも特徴で、ウナギのシュードモナス敗血症とされている。ただし、ヨーロッパ・ウナギでは点状出血は少なく体色が白くなる程度である。その対策としてはやや高水温化(26-27℃以上)、養殖水の淡水化、魚種の代替え(ヨーロッパ・ウナギ)などが挙げられるが、予防法としては実験的にワクチンが検討されている。また、治療には抗生物質(クロラムフェニコール)や合成化学療法剤(オキソリン酸)が有効であるが、この病気の発生時期と摂餌との関係で治療が困難である。
赤点病菌は偏性病原菌とされ、グラム陰性、好気性菌で、1本の鞭毛で運動する短桿菌(0.5×1-3μm)である。細胞の最外部に厚い被膜(莢膜)をもつことが特徴である。発育は15-20℃,pH7-9,塩分0.5-1%でよく発育するが、かなり遅く淡水中では長期間は生きられない。菌株によってはタンパク質を分解するが、デンプンを分解せず蛍光色素をもたない。
なお、別項(シュードモナス病菌)で記載するが、ブリやタイのシュードモナス病やコイの"細菌性白雲症"やアマゴの類似感染症の原因菌は赤点病菌とは別のシュードモナス属の細菌である。

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