◆魚類のトリコジネラ症原虫 [Trichodinella epizootica]

 淡水・海水性魚類の鰓(えら)などに寄生する繊毛虫類の中には、少膜類(緑毛類)のトリコジナ属とトリコジネラ属に含まれる多種の原虫が知られている。トリコジナ症はヨーロッパやアメリカでは各種の養殖されている淡水魚の幼稚魚に被害をあたえ、日本ではキンギョ、コイ、ウナギ、マス類などの幼稚魚の鰓や皮膚に寄生した例があるが、従来は問題にされていなかった。しかし最近、養殖ヒラメやトラフグなど海水魚に寄生した例があるので今後注意する必要がある。
トリコジナ症の病原体は標記の原虫のほかにも多くの種が報告されている。中でもウナギやキンギョにはドメルグエリ原虫(T.domerguei)とレティキュラタ原虫(T.reticulata)が、また、サケ科魚類にはトルッテ原虫(T.truttae)が寄生する。多数のトリコジナ原虫が鰓へ寄生すると、魚に粘液分泌や炎症をおこし、呼吸が困難になって死亡する可能性もあるが、キロドネラ症原虫のように、鰓(えら)に多数のトリコジナ原虫がいても異常がない場合もあるので、これらの繊毛虫類は間接的な原因であるという考え方もある。
トリコジナ原虫の大きさは種々あるが(直径10-100μm)10μm程度が多い。一般的な形は上面からは円形で、側面からはベル型(円錐形)にみえる。上下面の周りに繊毛が密生し、水中を泳ぎ、魚の体表面を滑ることができる。下面には複雑な形の歯状体が放射状に並んでいる。細胞にはC字型の大核と球状の小核があり、増殖は二分裂または有性生殖によるが、シストはつくらない。対策として白点病と同じメチレン・ブルー、マラカイト・グリーンまたはホルマリンの薬浴法がとられている。

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