◆魚類のホーマ症菌 [Phoma sp.]

 ホーマ症は種苗生産されたアユの稚魚に発生する内臓の真菌病(かび病)の1種である。10月に体長約16cmの飼育アユが感染し、約60%が斃死(へいし)した例がある。しかし、アユの成魚やほかの魚種では知られていない。末期の病魚の腹部が白く濁り、しばしば菌糸が体外へ伸びている場合もある。内臓では腎臓が最も多く冒されるが、腹腔、浮嚢(うきぶくろ)、腸、肝臓、膵臓のほかに筋肉にも原因菌が観察される。感染経路は原因菌が口から浮嚢へ入り、そこで増殖してから諸臓器へ広がり、致死させると考えられている。
原因菌は不完全菌類のスフェロプシス目、スフェロプシス科のホーマ属の1種で、形はやや長い楕円球状である。寒天培地上では分生子殻をつくり、その中に多数の透明な分生子ができ、気菌糸は暗黒褐色であるが、このかびの菌種は確定されていない。また、このかび病の有効な予防・治療対策もない。

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