◆魚類のマイコバクテリウム症菌 [Mycobacterium marinum,Mycob.fortuitum]

 魚類のマイコバクテリウム症はかなり古くから知られている。ほとんど水族館の飼育魚とくに熱帯魚に発生する魚病で、鑑賞魚業界で問題になるが、産業的な養殖魚での発生はきわめてまれである。アメリカ西部の孵化(ふか)場でマスノスケに初めてみられ、西部諸州とアラスカでギンザケ、ベニザケ、ニジマスなどのサケ科魚類に発生したが、その後、この魚病は衰退した。日本では淡水、海水魚いずれにもこの魚病の発生が報告されていない。
症状はどの魚種でも肝臓、腎臓、脾臓などに小さい結節が多数できることで、ときに小さい壊死(えし)がおきた病巣もみられる。
初めて魚類のマイコバクテリアとして報告された細菌はコイから分離されたマイコバクテリウム・ピスシウム(Mycobacterium piscium)である。その後、原因菌として多数のマイコバクテリアが報告されたが、魚病の原因になるマイコバクテリウム属の中で、現在、国際的な細菌鑑別・分類書に記載されているのは標記の菌種だけである。前者は大西洋ニベ、オヤビッチャとスズキなどの海産魚から初めて分離された細菌であるが、ヒトにも感染して皮膚肉芽腫をおこす人魚共通病原菌とされている。この細菌はプールからや熱帯魚取扱者に感染例がある。また、後者の細菌は熱帯魚やタラから分離された。
マイコバクテリウム属の細菌はグラム陽性、抗酸性、好気性の運動しない桿菌(0.2-0.6×1-10μm)で、27-35℃で発育するがかなり遅く、分離培養に手数がかかる。なお、ヒトの結核菌は同属のマイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycob.tuberuculosis)である。

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