◆魚類の水かび病菌 [Saprolegnia parasitica,S.shikotsuensis]

 鞭毛菌類の中の卵菌類に属する水かびが魚類に寄生して、独特の症状をおこす真菌症を全て"水かび病"とよんでいる。このかび病はかっては"水生菌病"または"綿かぶり病"とよばれていたが、この病名はほかのかび病と紛らわしいので現在は使われていない。わが国ではサケ科魚類に上記のかびによる病気が報告されているが、欧米では同じサプロレグニア属の別の菌種が原因する水かび病が多い。とくにサケ・マス類の孵化(ふか)場では採卵後の魚卵に寄生すると問題になることがある。その症状として卵または魚体の表面に綿毛状の菌糸の集塊がみられ、さらに、魚体では表皮の組織、真皮、皮下、筋肉へと菌糸が伸びて、ついにはそれらの組織を壊死(えし)させる。低タンパク血症となり、浸透圧の調節が障害となることが死因と考えられている。
水かびは鞭毛菌類(以前は藻菌類の中の1群)の卵菌類に属し、ミズカビ科のミズカビ属、ワタカビ属、アファノマイセス属に分類されている多くの菌種がある。これらの水かびの形は区切りのない糸状の菌糸で、休眠胞子(8-15μm)をつくり、はっきり区別できる造卵器と造精器をもち、無性的には遊走子によって増殖する。サプロレグニア・シコツエンジス(S.shikotsuensis)は北海道支笏(しこつ)湖の天然のヒメマスから分離された水かびである。水かび病の予防や治療は各国でマラカイト・グリーンが使用されている。
なお、しばしばウナギに発生する"綿かぶり病"の原因菌もサプロレグニアであるが、まだ菌種は確定されていない。ただし、このかび病が発生する前の病気として、細菌性のエロモナス感染症が疑われている。

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