◆魚類のレッドマウス病菌 [Yersinia ruckeri]
レッドマウス病はサケ科魚類の細菌性魚病の一つである。この魚病は元来、北アメリカのロッキー山脈地帯で発生する地方病とされていたが、最近、その分布域がカナダ、アメリカ諸州やオーストラリアにも広がっている。しかし、日本やヨーロッパにはみられない。ニジマスのほかにスチールヘッド、カットスロートトラウト、ギンザケ、マスノスケ、大西洋サケにも発生した例がある。
症状は魚の口唇、顎(あご)など口部の皮膚が発赤して、ただれることが特徴である。内臓も多数の病原菌によって冒され、肥大、暗赤色に変化して出血などがみられる。また、造血器官や血液も変化し、慢性的な場合でも死亡率はかなり高い。
この魚病の予防対策としては魚卵を有機ヨード剤で処理する方法が有効とされる。現在、欧米でこの魚病に対する注射ワクチンが市販されている。レッドマウス病菌はヒトのペスト菌に類似して、グラム陰性、通性嫌気性の桿菌(1.0×2.0-3.0μm)であるが、培養が長くなると糸状になることがある。30℃以下では細胞の周囲にある鞭毛で運動するが運動しない菌株もある。発育は20℃前後が最適で、タンパク質を分解するがキチンなどの多糖を分解しない。また、この細菌の血清型はどの菌株でも同じである。
細菌性魚病
サケ科魚類
有機ヨード剤
ペスト菌
グラム陰性菌
通性嫌気性
鞭毛
タンパク質
キチン
多糖
血清型