◆コイの上皮腫ウイルス [Carp epithelioma virus (CEV)]

 コイの上皮腫はコイの頭部、尾部、鰭(ひれ)の表皮細胞が腫瘍になり、白色の隆起ができるウイルス病で、ヨーロッパでは古くから"ポックス病"とよばれていた。この魚病はアメリカにも分布しているが、日本でもニシキゴイやキンギョにみられ、1981年に新潟県下のニシキゴイ(アサギ)に発生して、原因ウイルスが分離された。ときには高率に発生するので、鑑賞魚業界で問題になるウイルス病の一つである。症状は上記のように、魚の表皮に上皮細胞が増殖した結果、白色ないし乳白色の隆起(厚さは1-2mm)が現れる。病原ウイルスは実験的にはコイに肝炎をおこす。腫瘍が直接死因につながることはないが、魚の成長が遅れてやせる。死亡率はコイで85%、アサギでは20%であり、腫瘍の発生率は55-60%であったといわれる。
原因ウイルスはヘルペスウイルス科に属すると考えられるDNAウイルスである(一般に2本鎖DNA)。エンベロープ(外被)をもち、その大きさは140-150nmで、突起の長さは25-34nmである。電子顕微鏡による観察では、円形ないし楕円形で、魚の細胞核の中では厚さ7mmの膜がみられる。現在、治療・予防法は知られていないが、病魚の駆除や隔離が必要である。

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