◆好塩細菌 [Halophilic bacteria]

 好塩菌ともよばれ、一般に生育するために塩化ナトリウム(NaCl)を必要とする細菌をいう。多くは海洋細菌であるが、塩湖、塩田、岩塩地帯などのほか、塩蔵品やみそ、醤油などの食品中にも生息している。好塩菌はNaClの要求する濃度によって、大体2-5%のNaClを要求する弱好塩菌、5-20%のNaClを要求する中好塩菌、20%以上のNaClを要求する強好塩菌に分けられている。ただし、その生育にNaClを必ずしも要求しないが、ある程度の濃度のNaClが存在しても生育する細菌もあり、それらは耐塩細菌(耐塩菌)とよばれる。耐塩菌は陸上にも多く、海洋からもしばしば分離される。海洋の平均的なNaCl濃度は2.8%であるから、海洋細菌の多くは弱好塩菌である。食中毒菌の腸炎ビブリオも弱好塩菌である。中好塩菌や強好塩菌は塩湖や塩蔵食品中に生息している。古くから塩蔵の魚やその加工品(蒲鉾など)が赤色または褐色に変化する現象が知られているが、それは強好塩菌がもっている赤色色素が原因である。強好塩菌にはハロバクテリウムやハロコッカスなどが知られている。強好塩菌の細胞表面にはカロテノイド系の赤色色素が含まれ、その内側にバクテリオ・ロドプシン(bacterio-rhodopsin)という紫色色素を含む紫膜が存在して特有の光合成を行っている。また、強好塩菌の細胞の構造や核酸、酵素などが一般細菌のような原核生物や多くの真核生物と違うことから、強好塩菌は好熱好酸菌やメタン細菌などとともに、第三の生物界として古細菌(古代細菌)とよばれている。
なお、イスラエルとヨルダンの国境にある死海の水はナトリウム・イオンよりマグネシウム・イオンが多く含まれ、まれな好マグネシウム細菌が分離されている。

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