◆クルマエビの中腸腺壊死症ウイルス
   [Mid-gut gland necrosis virus of Panaeus japonicus (MGNV-PJ)]

 この病気は以前、"中腸腺白濁症"とよばれていたが、バキュロウイルスが感染しておきることが判ったので、病名は"バキュロウイルス性中腸腺壊死症"とされている。このウイルス病は1971年、初めて山口県のクルマエビ種苗生産場で発生して以来、全国的に広がってクルマエビの養殖に大きな被害をもたらしてきたが、その後、予防対策の普及によってこの病気の発生が減少してきた。多くはクルマエビの幼生(体長9mm以下)が感染して、その死亡率は90%を超え、しばしば大量斃死(へいし)をおこしたこともあるので軽視できない病気である。 症状は中腸腺が白く濁り軟化する。中腸腺の上皮細胞の核内でウイルスの増殖がみられ、核が肥大することが特徴である。おもな感染源は不顕性感染をした親エビで、その排泄物などとともに水中へでたウイルスが幼生の口から感染する。
原因ウイルスはバキュロウイルス科(2本鎖DNA)に属しているが、まだ分離されていない。宿主細胞内ではカイコのバキュロウイルスのような封入体(核多角体)をつくることはない。形は桿状でその大きさは72×310nmである。このウイルスは清浄な海水中(25℃)や塩素あるいは紫外線によって不活化される。発病を防止するには受精卵の選別、洗浄後、別の水槽へ移して垂直感染を防止する方法と、発病した幼生を殺滅して水平感染を防止する方法や徹底的な消毒法が用いられている。なお、ウシエビの幼生に感染して中腸腺を冒すモノドン・バキュロウイルス(MBV)も知られている。

関連 バキュロウイルス
関連 中腸腺
関連 不顕性感染
関連 封入体
関連 消毒法