◆ノリの赤ぐされ病菌 [Pythium sp.]

 赤ぐされ病は日本各地で養殖されているノリ(紅藻:アサクサノリ)の真菌病(かび病)として古くから知られ、しばしば甚だしい被害をもたらしてきた。このかび病については日本で病理学的な研究が行われて1947年に報告され"ノリの赤ぐされ病"と命名された。この病気は以前は1月から3月頃に多発していたが、ノリの養殖法が改良されてから、10月から12月にかけて多く発生し、春先に再び蔓延する場合が多い。
症状はノリ養殖場の"ひび"(養殖支柱)の上に生育したノリの葉体に初めは褐色の斑点が現れ、次第にその斑点(5-20mm)が赤錆色に変化し、その後、斑点が黄緑色から淡黄色になってやがて褪色する。病状が進むとノリ全体に病巣部が広がり、腐敗して穴があいて脱落する。病班部には発育した原因菌がノリの細胞を貫通しているのが観察される。また、その周辺に藻紅素(フィコエリスリン)の桃赤色の針状結晶をみることがある。
原因真菌であるピチウムは鞭毛菌類(以前は藻菌類の1群)の卵菌類、ツユカビ目、フハイカビ科に属する。菌糸(径1.5-3.0μm)は区切りがなく、枝分かれが多く、菌糸内に多数の小顆粒をつくる。成長すると菌糸がノリの葉体外へ小突起をだし、その先に腎臓型の遊走子(7-14×4-8μm)を含む球状の嚢をつくる。生育した遊走子は2本の鞭毛で泳ぎまわる。また、生育条件が悪い時は造卵器や造精器をつくる。このかびは生きたノリに寄生するが、枯死したノリには寄生しない。発育は12-24℃が適している。また、紅藻類のアサクサノリ以外にマルバアマノリ、オニアマノリにも寄生して同じような症状になるが、アオノリ、アオサ、ヒトエグサなどの緑藻類には寄生しない。

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