◆ノリの壷状菌 [Olpidiopsis sp.]

 壷状菌病は主に養殖ノリの初期生産の時期である11月から12月にかけて、ノリ幼芽におこる真菌病(かび病)である。一般的にはノリ生産にさほど影響はないが、ノリの生育妨害や品質低下の原因となり、最近、有明海で多発して"赤ぐされ病"と同じ程度の被害をおよぼした。原因菌がノリの細胞内へ寄生するので、肉眼的な症状は末期になって現れる。原因菌がある程度発育すると、ノリの細胞内に球状の菌体がみられ、さらにノリの色素体が変形、萎縮し端に押しやられる。この時期のノリ葉体は黄緑色になり、やがて先端部の細胞が崩壊して、部分的に穴ができることもある。
病原菌はノリの細胞内での観察では一般に球状をして、その内部に大小の顆粒、油滴や液胞がみられる。その菌体(径6.0-20μm)は淡黄緑色であるが、まれにノリ細胞内の色素によって淡紅色になることもある。生育すると菌体全体が遊走子嚢となって、長卵型で2本の鞭毛をもつ多数の遊走子を放出する。このような特徴から、この病原菌は鞭毛菌類(以前は藻菌類の1群)の卵菌類に含まれるクサリフクロカビ目、フクロカビモドキ科の一属オルピジオプシス属とされているが、今のところ培養ができず菌種も未確定である。

関連 遊走子
関連 鞭毛
関連 鞭毛菌類
関連 藻菌類
関連 卵菌類