◆ノリの緑斑病(緑変症)菌
   [Micrococcus sp.,Pseudomonas sp.,Vibrio sp.]

 日本のノリ養殖場ではかなり古くから、ノリ(紅藻)の葉体が円形または半円形の病変部を生じ、そこに穴があく"穴ぐされ病"とよばれる病気が知られている。一方、瀬戸内海(広島湾)のノリ養殖場で、穴ぐされ病に似ているが病徴などが違う別の病気が発生し(1968)、新たに"緑斑病"と名付けられた。また、有明海で発生したノリの病気もこれに似ており"緑変症"と名づけられた。その後、このような病気が全国各地のノリ養殖場にも広がり、しばしば発生して問題になっている。この病気は内湾、ときには外洋でも有機物が多い富栄養の環境で、西日本では11月から12月にかけて、とくに水温が高い時期あるいは降雨後や摘採後に多発する傾向がある。水質汚染によってノリの幼葉や成葉が傷を受けやすい状態になることが、この病気が多発する間接的な原因であろうと考えられている。
病徴は初期には葉体に小さい赤錆(さび)色ないし淡紅色の隆起した斑点が現れ、やがて緑色の斑点に変わる。さらに病気が進むと病巣部の周辺が鮮緑色になり内部は白色になる。病巣部が流失すると内部に孔があく。
原因としてある種の海洋性の粘菌(変形菌)や糸状細菌ロイコスリックス・ムコール(エビの鰓着生菌)も関係するようであるが、緑変症で実験的にはミクロコッカス属、シュードモナス属とビブリオ属の細菌が同じような病変をおこすと報告されている。しかし、環境要因とも関係してまだ不明な点が多い。なお、病葉体が緑色になるのは、藻紅素フィコエリスリンが消滅し、葉緑素クロロフィルが残るからであろうと考えられている。

関連 紅藻・藍藻の色素
関連 粘菌
関連 変形菌
関連 エビの鰓着生菌
関連 葉緑素クロロフィル