◆黄色ブドウ球菌[Staphylococcus aureus]

 乾燥や高塩分濃度の環境でも生存できる細菌で、体の表面、鼻や腸管の正常細菌叢として多数存在している。黄色ブドウ球菌は、エンテロトキシン(腸管毒素)、溶血毒素(赤血球を溶かす毒素)、コアグラーゼ(血漿を凝固させる酵素)、表皮剥脱毒素、毒素性ショック症候群毒素(TSST)などの様々な外毒素や酵素を産生する。黄色ブドウ球菌は、様々な毒素や酵素の産生と密接に関係し多彩な感染症を引き起こす。良く知られている感染症は、結膜炎、乳房炎、肺炎などの化膿性炎症や、100℃、30分間の加温でも安定な耐熱性エンテロトキシンによる毒素型食中毒、表皮剥脱毒素によるブドウ球菌性皮膚剥脱症候群などがある。
近年はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による院内感染が発生しる。このMRSAはメチシリン以外の多くの化学療法剤にも抵抗性で、更に、MRSAに有効であったバンコマイシンに対しても抵抗性を示す細菌(バンコマイシン抵抗性黄色ブドウ球菌;VRSA)も増加し、益々治療が困難になっている。
関連 バンコマイシン
関連 細菌
関連 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
関連 バンコマイシン抵抗性黄色ブドウ球菌(VRSA)