◆緑膿菌 [Pseudomonas aeruginosa]

 偏性好気性のグラム陰性の桿菌で、シュードモナス科、シュードモナス属の細菌である。一般的には、ブドウ糖を嫌気的に分解(発酵)できないのでブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌と呼ばれ、腸内細菌科の細菌とは区別される。
 比較的大きな桿菌で、一本の鞭毛を持ち、普通寒天培地などでもよく増殖するが、近年分離される菌は、割と偏平で表面のガサガサした感じのラフ型の集落を作る。色素産生性があり、臨床分離株ではピオシアニンと呼ばれる緑色の色素とピオベルジンと呼ばれる蛍光色素を産生し、その他にも、オレンジの色素やピンクの色素を産生する株もある。
 緑膿菌という名前は、創傷感染すると、この菌が増殖して傷口から緑色の膿が出てくることから付けられた。
 緑膿菌とその仲間の細菌は、病院などで多く使用されているヒビテンなどの消毒薬やある種の化学療法剤に先天的に抵抗性がある。最近更に薬剤耐性性の細菌が増加しているが、元々自然界にも広く分布し、栄養分の乏しい環境でも生存出来るので、病院などのように感染症の予防や治療の為に消毒薬や化学療法剤を大量に使用している所でも死滅しないで生き残っている。
 病原性は余り強くはないが、カテーテルを挿入されている易感染性宿主などでは、カテーテルのチューブにバイオフィルム(biofilm)と呼ばれる膜を被った菌の集落をつくって増殖し、重篤な院内感染や菌交代症、日和見感染を起こす原因となる。膿菌による感染症は、皮膚の化膿、尿路感染症、肺炎などの呼吸器感染症、目の感染や敗血症などがある。