◆りん菌 [Neisseria gonorrhoeae]

 ナイセリア属の代表的な細菌で、ヒトに寄生性の強い細菌である。 グラム陰性の双球菌で、腎臓形や半球状の2個の球菌が接しているように見える。鞭毛も芽胞も持たない。染色液で容易に染まるので、急性りん疾患患者の膿の中では、好中球の細胞質内に群がって存在している典型的な像が顕微鏡で観察できる。
 好気性菌であるが、分離当初の株は5〜10%の炭酸ガスの存在下でよく増殖するので、ローソク培養で培養する。増殖には様々な栄養分が必須で、ウシの肉や心臓の抽出液を加えた血液培地やチョコレート培地などを用いる必要がある。
 ヒトに寄生性が強く、人体外での生存力は非常に弱いので、血液培地で37℃に3、4日おくと大部分が死滅する。低温にも弱く、菌株の保存は室温以上で行う必要がある。ヒトでの病気は性行為感染症(STD)に分類されるりん病の原因となる。妊娠中の母親がりん菌に感染していると、出生時に産道感染し、新生児にりん菌性結膜炎を起こし、失明の原因となる場合もあるので、生まれてからすぐに化学療法剤で点眼をする。