◆ロブスターのガフケミア菌
[Aerococcus viridans var.homari]
古くから北アメリカとヨーロッパの北大西洋沿岸に生息しているか、蓄養されているアメリカン・ロブスターまたはヨーロピアン・ロブスターに"ガフケミア(レッドテイル病)"とよばれる病気が知られ、かなりの被害がでている。とくに蓄養されているロブスターが負傷すると感染しやすい。
症状はロブスターの腹の下部や血リンパ液(正常では無色)も桃色に変化して凝固しにくくなり、食細胞が著しく減少することである。ついには敗血症をおこして死亡するが、死亡率も水温が15℃を超えると高くなるといわれている。近年、わが国でもロブスターの完全養殖が試験的に行われてきたが、この病気が発生した報告はない。しかし、外国から輸入されるロブスターを蓄養または孵化(ふか)させる場合は防疫を充分行う必要がある。
原因菌は以前、ガフキア・ホマリ(Gaffkya homari)とされていたが、現在は標記の学名に改められている。外国ではロブスター蓄養池や海水からも分離されることから、条件性病原菌とも考えられる。グラム陽性、通性嫌気性(微好気性)で、莢膜をもつ四連球菌(1.0-2.0μm)である。発育は30゚C,pH9.6,塩分10%、胆汁酸塩40%を含む培地が最適である。ヒトの血液を溶解(溶血)して緑色に変化させることが特徴である。また、タンパク質、繊維素、リン脂質などを分解せず、タンパク質を凝固する酵素ももたないが、特定の毒素をつくる疑いももたれている。
食細胞
敗血症
条件性病原菌
グラム陽性菌
通性嫌気性
莢膜
溶血
タンパク質
繊維素
リン脂質
酵素