◆脂質分解酵素 [Lipolytic enzyme(s)]

 おもな脂質分解酵素として、グリセロールエステルを分解して脂肪酸を遊離するリパーゼとリン脂質(グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質)を分解するホスホリパーゼがある。
リパーゼはトリアシルグリセロール中のエステル結合を順次切断して、グリセロールと脂肪酸に分解する酵素で、種々の哺乳動物の体液(血清、脳脊髄液、リンパ液、尿、乳など)や臓器、昆虫、植物種子、真菌(かび)、細菌などから精製され、それらの酵素的性質が明らかにされている。
ホスホリパーゼは加水分解されるグリセロリン脂質のエステル結合を切断するが、その位置によって、A1,A2,C,Dに分けられている。リゾリン脂質を分解する酵素はリゾホスホリパーゼとよばれ、ウシの膵臓と肝臓、青かびの酵素がよく研究されている。スフィンゴミエリンを分解する酵素はスフィンゴミエリナーゼとよばれ、スフィンゴミエリンのリン酸ジエステル結合を切断して、セラミドとコリン・リン酸に分解する(Dはセラミドリン酸とコリン)。この酵素は高等動物の腸、肝臓、脾臓などに存在する。ホスホリパーゼ A2はヘビ毒や膵液中に存在し、A1とA2,は細胞内酵素として哺乳類や微生物に広く分布している。ホスホリパーゼ Cはウェルシュ菌などのクロストリジウム属、セレウス菌やブドウ球菌の毒素として知られている。

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