◆真菌 [Fugus(gi)]

 真核生物の中の原生生物界の1群で、一般的な名称で分類上の用語ではないが、きのこ、かび、酵母などが真菌である。また、菌類という名称も真菌と粘菌(変形菌)をまとめた一般的な用語である。生物学的にはきのこで代表される担子菌類、かびとよばれる子嚢菌類、酵母も含まれる不完全菌類および水かびなどの鞭毛菌類と接合菌類に分けられる。
酵母以外のほとんどの真菌は多核性で、菌糸体とよばれる長い栄養体をもち、枝分かれしている場合が多い。菌糸体は生殖細胞(有性生殖:接合子)または胞子(無性生殖)や遊走子などの発芽でつくられる。真菌は細菌や藍藻のような原核生物と違って、高等動植物や原生生物と同様に真核細胞でできているから、二重の核膜に囲まれた核があり、全て好気性菌で、呼吸はミトコンドリアとよばれる器官で行われる。また、一般植物の細胞と似て、キチン、セルロース、グルカン、マンナンあるいはキシランなどの多糖から成る厚い細胞壁をもっているが、おもに有機物を直接摂取して栄養にしているので、多くの原虫や粘菌と同様に従属栄養性の原生生物である。
担子菌類では、まず接合子が担子器へ成長し、その担子器の端から胞子ができて放出される。きのこはこの担子胞子をつけた比較的大きな子実体とよばれる部分である。担子胞子から栄養菌糸がつくられる。
子嚢菌類では接合子が袋状の構造体である子嚢の中で減数分裂と有糸分裂を行って子嚢胞子となり、やがて子嚢がやぶれて胞子が放出され、胞子から栄養菌糸になる。アオカビ(ペニシリウム)、クロカビ(アスペルギルス)、アカパンカビ(ニューロスポラ)などはこれに属する。
不完全菌類は有性生殖をしないか、有性世代が知られていない菌類の暫定的な分類名である。ボトリチス、セファロスポリウム、トリコフィトン(白癬菌などがこれに属する。酵母はほとんど菌糸状(偽菌糸をつくる酵母もある)にならず、球形または卵形の単細胞で、その出芽によって増殖する。したがって、酵母は分類上、担子菌類、子嚢菌類、不完全菌類のいずれかに属している。
藻菌類は運動しない胞子と接合によって接合胞子をつくる接合菌類と、鞭毛がある遊走子をつくる鞭毛菌類に分けられる。ただし、現在、藻菌類という名称はあまり使われず、接合菌類とともにツボカビ類、サカゲツボカビ類、卵菌類として独立させて取り扱われることが多い。接合菌類には陸生のクモノスカビやケカビなどがあり、卵菌類には魚類や甲殻類に寄生する種々のミズカビやノリの壷状菌などがある。
 しかし、全生物からみた真菌の分類上の位置付けについては、いくつかの説があるが、最近、これらの真菌の中で担子菌類、子嚢菌類、不完全菌類、接合菌類と、藻類と真菌の共生体である地衣類をまとめて「菌界」とし、従来の真菌に含められていたツボカビ類、サカゲカビ類、卵菌類などは原生生物界として分ける傾向にある。
真菌の多くは腐生菌であるが、アルコール飲料や味噌、チーズなどの酪農品の製造に欠かせない有用なものも多いが、中には上記のようにヒトをはじめ種々の動物や果樹、穀類あるいは野菜などの植物病原菌もある。なお、真菌にはペニシリンなどの抗生物質やアフラトキシンのような真菌毒素、ジベレリンのような植物ホルモン、ビタミンや酵素その他の生理活性物質をつくるものも知られている。その発育は抗真菌性抗生物質で阻止される。

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