◆神経毒素 [Neurotoxin(s)]
生物によって産生され、筋肉の麻痺が最も著しい症状を示す有毒物質をいう。低分子物質を神経毒、タンパク質のような高分子物質を神経毒素ともいう。筋肉の麻痺は中枢神経系、末梢神経系、神経・筋シナプスの障害によっておこる。アセチルコリンの放出を阻害する毒と、アセチルコリンの受容体を塞ぐ毒がある。前者には台湾産のアマガサヘビの毒であるβ-ブンガロトキシン(bungarotoxin)、後者にはα-ブンガロトキシン、奄美大島付近のエラブウミヘビ毒のエラブトキシン(erabutoxin)などがある。これに対して、フグ毒のテトロドトキシン(tetrodotoxin)は神経細胞膜のナトリウム・チャンネルを塞いで刺激の伝達を阻害する。フグ毒の作用に似た神経毒としては、渦鞭毛藻が原因する神経性貝毒ブレベトキシン(brevetoxin)などがある。また、高分子の神経毒素としては細菌毒素のボツリヌス毒素や破傷風毒素(テタノスパスミン: tetanospasmin)が知られている。なお、赤痢菌の志賀毒素は出血毒素の一つで、神経障害は二次的な作用であることが判っている。
タンパク質
渦鞭毛藻
細菌毒素
ボツリヌス毒素
破傷風毒素
神経性貝毒
志賀毒素
フグ毒