◆タンパク質分解酵素 [Proteolytic enzyme(s)]

 プロテアーゼまたはペプチダーゼともいい、タンパク質またはペプチド(数個のアミノ酸が結合)のペプチド結合を加水分解して、複数個のアミノ酸またはペプチドを生成する酵素である。一般に高分子のタンパク質を分解する酵素をプロテアーゼといい、低分子量のペプチドを分解する酵素をペプチダーゼという。これらの種々のタンパク質分解酵素は動植物や微生物界に広く分布し、細胞の内外に存在する。
ペプチド鎖のどちらかの一端から順次切断する酵素をエキソペプチダーゼ、ペプチド鎖の中程から切断する酵素をエンドペプチダーゼという。前者にはN末端(遊離アミノ基がある末端)から分解する酵素をアミノペプチダーゼ、C末端(遊離カルボキシル基がある末端)から分解する酵素をカルボキシペプチダーゼという。一方、エンドペプチダーゼはその触媒残基の種類によって、セリンプロテアーゼ、チオール(システイン)プロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、金属(亜鉛、マンガンなど)プロテアーゼに分類される。
凝乳酵素のようなタンパク質を凝固させる凝固酵素もプロテアーゼの一種であるが、非特異的な分解活性が低いレンニン(キモシン)(rennin,chymosin) がよく知られている。プロテアーゼの機能は多様で、栄養タンパク質の消化、使用済みのタンパク質の分解、不活性な前駆体から活性物質への変換や逆の不活性化など、生体内での調節・制御などの生理や病態に重要な役割をもっている。一方、病原菌の病原因子としての作用や毒素前駆体の活性化にも関与している。また、種々のプロテアーゼは医薬品や食品工業にも利用されている。

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