◆ツツガムシ・リケッチア [Rickettsia tsutsugamushi]

 日本で古来より風土病として知られていた「恙虫(ツツガムシ)病」の病原体である。リケッチアの微生物としての特徴は、1)細菌とウイルスの中間的な微生物で、生きた細胞の中でしか増殖できない、2)遺伝情報としてDNAとRNAの両方を持つ、3)ニ分裂で増殖する、4)グラム陰性菌に近い細胞壁をもつなどの事から細菌に分類される。
 恙虫病は、世界的にはアジア地区のパキスタン、インドネシア、日本を結ぶ三角形の中の地域に存在する。日本では、以前は新潟、秋田、山形の河川沿いに見られる病気だったが、1984年に、紅班熱群リケッチアによる感染症が徳島県で初めて報告され、新型ツツガ虫病(日本紅班熱と命名された)として北海道と沖縄を除く全国各地に存在する事が明らかになった。
 恙虫病はダニの一種のツツガムシが保有・媒介する病気で、日本紅班熱群リケッチアはリケッチア・ジャポニカ(Rickettsia japonica)と命名され、タテツツガムシに媒介される。リケッチアを持つツツガムシに刺されると、口吻を通してリケッチアが注入されて感染が起こり、リケッチアは感染した場所で増殖して「刺し口」と呼ばれる病変を生じる。テトラサイクリンやクロラムフェニコールなどの化学療法剤が有効である。