◆ディノフィシス属渦鞭毛藻 [Dinoflagellate,Dinophysis]

 日本では下痢性貝毒(DSP)の原因になる渦鞭毛藻*はディノフィシス属のプランクトン*で、ディノフィシス・フォルチ(D.fortii)とディノフィシス・アキュミナタ(D.acuminata)が発生するときに貝の毒化が観察され、海水から分離した藻細胞にオカダ酸(okadaic acid: OA)とディノフィシストキシン 1(dinophysis toxin1: DTX 1)が存在する。この両種は日本各地に分布している。一方、ヨーロッパではディノフィシス・アキュタ(D.acuta)が原因になる下痢性貝毒が多く、貝毒の主成分はオカダ酸である。ディノフィシス属の渦鞭毛藻は光合成色素をもつ種類と、これをもたない種類に大別できるが、下痢性貝毒との関係が指摘されているのは、ほとんどが前者に属している。しかし、これらの渦鞭毛藻は今のところ培養ができず、毒の産生は天然の藻細胞の分析で確認される。下痢性貝毒は上記の2種のほかに、D.tripos,D.acuta,D.norvegicaなどの光合成種や、光合成色素*をもたないD.mitra,D.rotundataなどからもみいだされている。
 ディノフィシス属の渦鞭毛藻は扁平な細胞で種によって楕円形、ナス形や突起がある場合などさまざまであるが、細胞の上殻は漏斗型で、下殻には鰭(ひれ)状の翼片が発達しているので、他の渦鞭毛藻とは容易に区別できる。細胞の大きさも種によって違い、細胞の長さは30-110μmで多様である。今のところ、この渦鞭毛藻の休眠胞子は認められていない。また、多くのディノフィシス属の渦鞭毛藻は沿岸や外洋に生息し、内湾に生息する藻種は少ないが、中には内湾で赤潮*の状態にまで増殖する藻種もある。

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