第18話
割り算と予言の書
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「主な対象読者」
今回の対象者は中学生以上ですが、文字式を全く使わず、自然数だけを対象としており、小学校に入って教わる最初の割り算だけしか使いません。もしかすると、小学校高学年なら理解できるかも知れません。
4章の「予言の書」では、皆さんが謎解きに挑戦してみましょう。
本 文 目 次
著作 坂田 明治
第18話 割り算と予言の書
1章.公約数
今回の主役は「割り算」です。しかも、自然数(ここでは、自然数に0を入れないことにします)の割り算しか扱いません。それにしても、タイトルが「割り算と予言の書」なんて、いかにも怪しげですね。
さて、この1章のタイトルは「公約数」なので、あまり印象がよくありません。つい、「公約」の「数」と読んでしまいそうです。「公約」といえば、選挙でよく出てくる言葉です。「あっ、あれか」とね。すると、選挙のときだけ出てくる「でまかせ」の嘘八百(うそはっぴゃく)だから、「ウソの数(かず)」のことだと思ってしまいませんか(こんなこと考えるのは筆者だけかも)。
ここでは、「公約の数」とは読まず、「公約数(こうやくすう)」と読みましょう。意味は、共通の約数ということです。まあ、これからやるように、少し背伸びして、学校で教えないことを考えた方が面白いものです(本当か?)。
まずは、「約数」の意味からです。例から入りましょう。12の約数は、12を割り切る数のことです。つまり、1、2、3、4、6、12のことです。どれも12を割り切っていますね。17の約数は1と17だけです。このように約数が2個だけしかない数は「素数」といいます(2個というのは、1と自分自身のことです)。28の約数は、1、2、7、14、28です。確かにどれも28を割り切っていますね。
このように、「約数」というのは、「その数を割り切る数」のことです。色々な数の約数を計算してみましょう。すぐに要領がつかめると思います。求め方は、最初に1で割って(割りきれるに決まっていますが)、次に、2で割って割りきれるかどうか、その次に、3で割って割りきれるかどうか、以下同じようにして調べて、最後に、その数自身で割って(これも割りきれるに決まっていますが)求めます。数が大きくなると計算が面倒です。
ところで、2、3、5、7、11、13、17、19、23、29といった数の約数を求めてみましょう。これらは1とその数自身の2個だけしか約数がありませんね。これら、約数が2個だけしかない数を「素数」といいます。計算練習のため、1から100までの素数を全部求めてみるといいです。
では、1はどうでしょうか。1の約数は1だけです。1個だけしか約数がありません(だから素数ではありません)。特殊な数ですね。特に目立った性質は、かけ算に対して、1をかけてもかけなくても結果が変らないことです。つまり、かけ算に対しては全くの無力です(この辺のことは、「第15話.ゼロは脅威の数」に書いてあります)。
それでは、「公約数」について考えましょう。二つの数(三つ以上でもいい)があるときに、その両方の約数になっている数を公約数といいます。例えば、6と8で考えてみましょう。6の約数は、1、2、3、6です。8の約数は1、2、4、8です。じーーーっとながめて、両方の約数になっているものを選べば、1、2です。これらが公約数になっています。
今度は、12、18で考えてみましょう。12の約数は、1、2、3、4、6、12です。18の約数は、1、2、3、6、9、18です。じーーーっとながめて、両方の約数になっているものを選べば、1、2、3、6です。これらが公約数になっています。
少し変ったところで、5と9で考えてみましょう。5の約数は、1、5です。9の約数は、1、3、9なので、公約数は1だけです。このように公約数が1だけしかない場合を、「互いに素」といいます。従って、「5と9は互いに素」ということになります。
だいたい要領が解ったと思います。適当に数を2個選んで、公約数を求めみてください。
2章.ユークリッドの互除法(ごじょほう)
この辺で気がついた人もいるかと思いますが、公約数には最大になるものがあります。そこで、最大になる公約数を「最大公約数」と呼びます。例えば、12、18の公約数は1、2、3、6ですので、6が最大になります。しかも、公約数1、2、3、6をじーーーっとながめてみると、1、2、3は6の約数です。ということは、最大公約数を求めれば、他の公約数は、最大公約数の約数として求められるということです。
12、18の公約数のように、最大公約数は、元の数より小さくなっていると期待できます。そこで、最大公約数を計算して、それから、最大公約数の約数を求めた方が計算が楽になりますね。
まずは、公約数を求めるということの図形的意味を考えてみましょう。
図1は、タテ12、ヨコ18の長方形です。公約数というのは、それぞれ、12と18を割り切る数でしたから、タテとヨコを丁度割り切る数です。図1を見れば解りますが、公約数の長さの正方形で元の長方形が敷き詰められています。公約数1、2、3、6に対応した正方形で長方形が敷き詰められているのが見て取れると思います。
特に重要なのが最大公約数の6です。このときは、長方形に敷き詰められる最大の正方形になっています。
それでは、最大公約数を求める方法について考えます。ここで述べる方法は、「ユークリッドの互除法」とか、「ユークリッドのアルゴリズム」とか、単に「互除法」と呼ばれています。
今度は、6と8の最大公約数を求めてみましょう。
(12、18では図形がごちゃごちゃするので) 図2をながめながら考えます。基本的な方針は、なるべく大きな正方形から順に敷き詰めていくことです。まず最初に、図のように、長さ6の正方形を置けるだけ置きます(といっても1個ですが)。6と8の最大公約数は6を割り切りますから、長さ6の正方形は、やがて、最大公約数の長さを持った正方形で敷き詰められます。ですから、この部分はもう問題ありません。
残りの部分を考えます。8から6を取れるだけ取った残りが半端部分になります。これは、8÷6 の余りです。そして、8÷6の余りは2ですから、半端部分はタテ6、ヨコ2の長方形です。6と8の最大公約数は6を割り切りますから、2を割り切らねばなりません(そうでなければ8が割り切れなくなります。図から、8の内6を割り切っているので、残りも割り切らないとならないことが見て取れます)。次の段階として、この半端部分(タテ6、ヨコ2の長方形)に長さ2の正方形を敷き詰めます。今度は丁度敷き詰められました。これは、6÷2の余りは0ということです。長さ2の正方形で、長さ6の長方形は敷き詰められますので、結局、元の長方形が敷き詰められます。
数が大きくなると図形を書けなくなりますので、機械的な計算で出せるようにしなくてはなりません。
まず、8÷6の余りを計算します。これは2です。次に、6÷2を計算します。割り切れますので、この一つ前の余り2が最大公約数になります。(1)の計算と図2をよくながめてみましょう。図2の説明にある計算で実行していることが解りますね。
今度は、5と9でやってみましょう。最大公約数は1になるはずです(互いに素ということ)。最初は、図形を書いてやります。
図3をながめながら考えます。まず最初に、図のように、長さ5の正方形を置けるだけ置きます(といっても1個ですが)。
残りの部分を考えます。9÷5の余りは 4ですから、半端部分はタテ5、ヨコ4の長方形です。この半端部分に長さ4の正方形を敷き詰めます。(といっても1個ですが)
5÷4の余りは1ですから、ここでできた半端部分はタテ1、ヨコ4の長方形です。今度はこの部分に正方形を敷き詰めます。うまく、長さ1の正方形で丁度敷き詰められました。これは4÷1の余りは0ということです。そこで、長さ1の正方形で、元の長方形が敷き詰められます。
計算で見ていきましょう。
まず、9÷5の余りを計算します。これは4です。次に、5÷4の余りを計算します。これは1です。続いて、4÷1の余りを計算します。割りきれますので、この一つ前の余り1が最大公約数になります。(2)の計算をよくながめてみましょう。ところで、1で割ったら割りきれるに決まってますから、赤字で書いた部分は不要です。余りが1になった段階で計算を打ち切って、「互いに素」としても全く問題ありません。
ここまでくれば、計算方法の見通しが立ちます。小さい方で大きい方を割ってその余りを求め、以下割りきれるまで、その余りで一つ前の余りを割っていけばいいわけです。
少し大きな数で試してみましょう。338と715の最大公約数を求めてみます。
機械的に計算して、13が最大公約数だと解ります。これはこれでいいのですが、念のために最大公約数になっていることを確かめましょう。まず、338 = 13×26、715 = 13×55なので、確かに13は公約数になっています。後は、338と715の約数を全て書き出せば、確かに最大公約数だと解ります。が、書き出すのは面倒です。次の章で、書き出さなくても済む方法を述べます。
3章.素因数分解
最初に、自然数を見なおしてみましょう。
1は、これ以上どうしようもないので、そのままです。
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