第47話
 数値化して初めて解ること
 

 
 
「主な対象読者」
 中学生から成人までの幅広い年齢層を主な読者と考えました。
 漫然(まんぜん)としている現象も数値化することにより、混沌(こんとん)としている内容からその先にあるものが見えてくることをいくつかの事例を使って説明しました。
 頭とハサミは使いようと言いますが、その頭を使うキッカケの作り方を理解してもらえればと願っています。
 
 
 
 
本 文 目 次
 1.はじめに
 
著者 田口 文章
 

 
 
第47話 数値化して初めて解ること
 
1.はじめに
 微生物学は、生物学の分野では、最も古い歴史と伝統のある科学です。微生物学の歴史は、ドイツのローベルト・コッホが炭疽という家畜の病気の原因が細菌という微生物によることを世界で初めて証明し、Bacillus anthrax(和名で炭疽菌)と命名した1876年から始まります。微生物学の歴史は、今年(2008年)で132年になります。
 古い生物学、特に微生物学では、毒素を作る(+)か作らない(−)かという定性的な表現はしますが、その毒素の強さなどを数値化して定量的に表現することはあまりないのです。たとえば、赤痢菌は百個(CFU)程度でも感染を起こしますが、コレラ菌は数千個(CFU)でやっと感染が成立すると、細菌の数で表現することは普段からあります。しかし、赤痢菌とコレラ菌の病気を起こす力(専門的には病原性といいます)を数値で比較することはないのです。
 
 ある方向からのみ漫然(まんぜん)と眺めていた数値も別な観点から見直すと、意外なことが判ってくることがあります。ここではそのような事例を取り上げて、数値化または数値を列挙して初めて解ってくることについて考えてみましょう。
 
2.世界人口の急激な増加を促進している要因
 「人と火 −エネルギーと環境を旅で考える−」と題した最首公司(さいしゅ こうじ)氏の著書の「はじめに」を読んで直感的に面白そうな本だと感じました。なんとも斬新(ざんしん)な発想の書き出しで、このようなモノの見方もあるのかと驚きました。その「はじめに」の一部の内容を紹介すると次のようになります。
 ・・・いまからおよそ100万年前、私たちの祖先は初めて「火」を手に入れた・・・僕たちの祖先が火を手に入れた動機は、害獣から身を守るためだと思う・・・考えてみると、ヒトとサルを分けたのは「火」ではなかったろうか。
 
 次に最首氏の著書では1枚の表にまとめて記載されている世界人口の動態を示す数値を、一部改編して田口流に説明します。地球上にこれまでに誕生した人間の総数は、500億人程度だそうです。今、現在の世界人口は64億人強であることを考えると500億人とは意外に少ない数に感じます。ところが今から2000年ほど前のイエス・キリストが誕生したころの世界の総人口は、2億5千万人程度であったと推測されるのだそうです。(表1)
 
表1.世界の総人口
西 暦 世界の総人口
2.5億人
1600 5億人
1830 10億人
1930 20億人
1980 40億人
2000 60億人
 
 それでは2000年まえに2億5千万人ほどであった世界の総人口は、とのような増加率で現在の60億人になったのかを、世界の総人口が2倍なるのに必要であった年数という指標でまとめ直したのが表2です。
 
表2.世界人口の倍増に要した年数
西 暦 世界の総人口 人口倍増に要した年数
2.5億人  
1600 5億人 1600年
1830 10億人 230年
1930 20億人 100年
1980 40億人 50年
2000 60億人 20年
 
 2億5千万人が2倍の5億人になるのに実に1600年間もの長い時間を費やしました。ゆるやかに人口は増えていたのです。産業革命を経験し、第一次世界大戦の時代と進むにつれて、世界の総人口が2倍に増えるのに要する年数は、驚くほどに短くなりだしました。私が生まれる少し前には20億人でしかなかった世界人口がたった50年間で40億人にまで増えてしまいましたのです。20億人の人口が20億人増えて40億人になるのに50年間も必要であったのに、40億人が60億人になるのには単に20年で到達してしまったのです(表2)。
 
 ここまでは少し頭の良い人であれば、気がつくことでしょう。ところが最首氏のすごいことは、どうして世界の総人口が2倍になる年数がこれほどまでに短縮されたのかを不思議に思ったわけです。イギリスで産業革命が起こると、どこの工場からももくもくと黒い煙が立ち上がったのです。家庭でも燃料に石炭を使うようになりましたので、煙突のススをとる煙突掃除を職業とする人が現れるほどでした。
 
 そこで最首氏は、主に使われていた燃料に興味をもち、表2にその当時に使用されていた主な燃料を挿入したのです。それが表3としてまとめました。この「エネルギー」の原料は長い間、薪と木炭が主役だった・・・古代文明は木を伐り尽くして・・・滅びた。これが石炭に変わって、文明が再生するのは18世紀後半に始まる「産業革命」・・・「薪炭時代」は、人口の増え方もゆるやかで、イエス・キリストが生まれたころの推定世界人口2億5千万人が、二倍の5億人にまだ増えるのに1600年もかっている。それが、「石炭時代」に入ると、わずか100年(1830年の10億人が、20億人になったのは1930年)に縮まった。
 
表3.世界人口の増加と主なエネルギー源
時代・西暦 人口倍増に要した年数 世界の総人口 主に使用していた燃料
  2.5億人   薪
1600 1600年 5億人 薪・炭
1830 230年 10億人 石炭
1930 100年 20億人 石油
1980 50年 40億人 天然ガス
2000 20年 60億人 原子力?
 
 これは薪炭より石炭の方がエネルギー効率がよく、人間を増やし養うことができたせいか、人口倍増年数は50年(1930年の20億人が1980年に約40億人)に縮まった。人口が増えるためには、いかにエネルギー資源が重要であるかということが、このことでもよく分かるというのが最初の「はじめに」に書いてあります。
 それでは、エネルギー源として、たとえば石炭と石油ではなにが違うのでしょうか。そこが頭の使いようで、最首氏は凄いことに気がついたのです。酸素と結合することが燃焼ですから、燃えるためには、炭素と水素が必要なのです。そこで表3にあげた燃料を構成している水素原子と炭素原子の比率を算出したのです。
 木は水素原子(H)1個に炭素原子(C)が10個もついている、すなわちHとCの比率は1対10であると根拠は良く分かりませんが書いてあります。次に石炭はH1個にCが2個の1対2で、炭素原子の数は木の5分の1となるのです。さらに石油になるとH2個にCは1個となり、CとHの比は2対1と逆転してしまう。・・・天然ガスだとH4個にCが1個だから、HとCの比は4対1となった。燃えて二酸化炭素を作り出すC原子は「木」の40分の1、石炭の8分の1と・・・人類はC原子の少ないエネルギー源(低炭素燃料)を求め、獲得に成功して人口を増やすことができたのです。(表4)
 
表4.燃料を構成する炭素と水素の比率
燃料の種類 炭素原子と水素原子の構成比
薪・炭 炭素原子10:水素原子1
石炭 炭素原子2 :水素原子1
石油 炭素原子1 :水素原子2
天然ガス 炭素原子1 :水素原子4
水素 炭素原子0 :水素原子2
ウラン 炭素原子0 :水素原子0
 
 世界の総人口を数値化してまとめることで、つぎのような大変な事柄が解りました。これまでの文明を後押ししてきたエネルギー源を「第一の火」とすれば、「第二の火」は二酸化炭素COをださない「Cゼロのエネルギー源」、つまり「ウラン」と「水素」であろう。元素のなかで最も重いウランと最も軽い水素が主役になろうとは、なんと味な組合せではないでしょうか。
 最首氏による「人と火−エネルギーと環境を旅で考える−」は、日本国が抱えている現在と将来のエネルギー問題を平易に解説することを目的としているものと思われます。ジャンボジェット機、例えばボーイング747型機のエンジンの出力は、60,000kW(6万世帯、18万人分の電気)を発電する能力があります。ジャンボ機は4基のエンジンを搭載しているからジャンボ機の乗客は240,000kWの発電所と一緒に大空を飛んでいるようなものだ。・・・日本は毎日石油のために約144臆円ずつ払っている。その結果日本人は年間一人2,500kg(2トン半、3人家族では7トン半)の二酸化炭素を排出している。・・・中東のエネルギー政策、イスラーム世界の人々、ラマダンと聖地、地下埋蔵物は誰のものか、オイルマネーをどう分配するかなどなど、普段私にはなじみが薄かった問題を平易に語りかけているのです。
 
 過去20年ほどシロアリから取り出した水素を作る細菌と私は楽しい時間を共有してきました。細菌は人間と違って決してウソをつきません、100パーセント掛け値なしに正直に対応してくれるのです。アリババではありませんが、「開けゴマ」とオマジナイをかけると、細菌はそれに応えてくれるので、細菌と遊んでいるととても楽しいものです。興味ある方は、理科好き子供の広場の「第25話 シロアリは水素を作る −オカシなバイキン−」を開いてみてください。
 
3.病原体のサイズと発見された年代
 次の図1は、「理科好き子供の広場」の40番目の話題として掲載してあります教授宇理須恒夫著作の「ナノテクノロジー、医療と分子科学」より転載させて貰いました。この図の珍しいことは、色々な病原体の寸法(大きさ)と発見された年代の関係およびナノテクノロジーを牽引したシリコン集積回路の微細化の変遷とを示すものだからです。
 
ウイルス(15-300nmの大きさ)の発見は、医学と物質科学の境界が無くなった瞬間であったと宇理須先生は言います。図1の縦軸は寸法(大きさ)で横軸がその病原体や計測技術あるいは大発見が行われた年代を示します。同時に20世紀後半に起こったナノテクノロジーの発展に直接寄与した半導体素子の微細化の進展をプロットしてあります。
 
 図1から、病気の原因が小さくなればなるほど、言い換えれば、病原体が物質に近づけば近づくほど、病気の原因や治療法が混沌(こんとん)としてくることが分かります。さらにこの図1は、発見される病原体の年代に対する勾配がナノテクノロジーの微細化限界の勾配と良く合っていることをも示しています、と宇理須先生は単純明快に言い切っています。
 
 しかし、宇理須先生のすごいのは、何の脈絡(みゃくらく)もないように見える、二つの現象を一つの図にはめ込んだことです。私のような古い微生物学を学んだ者でも、微生物の大きさとその発見された時代を図に表わすことができたとしても、それがなにを示唆しているのかまでは把握できません。
 
 
図1 病原体の寸法と発見された年代
 
「理科好き子供の広場」に掲載してある
宇理須恒夫著作「ナノテクノロジー、医療と分子科学」より転載。
 
 これは人類が病気との闘いにおいて、自分たちの利用できる極限の技術をいつの時代も駆使して必死に格闘していることを意味しています。即ち、これからは病気の原因の解明や治療法の開発においてナノテクノロジーが大活躍することを示唆しているものと考えられます(宇理須先生談)。これは人類が悩まされ続けている病気に対する大予言だと私は感じました。
 
4.エイズのもの凄い破壊力
 少し古い情報ですが、平成11年3月20日の全国紙朝刊に「エイズにより寿命25年短くアフリカ諸国」という紙面上は小さいけれど驚くべき内容の記事が掲載されていました。1998年の世界人口統計で、アフリカ諸国の平均寿命がエイズのために最大25年も短くなっていることが分かったというのです。最も深刻なのはジンバブエで、エイズの患者やHIV感染者がいなければ64.9歳のはずの平均寿命が、実際には39.2歳になってしまったというのです。このほか、マラウイ、ザンビアとスワジランドと平均寿命が30歳代に落ち込んでいる国は計4ヶ国に達したそうです。平均寿命がこれほど短くなった理由は、子供や青年の死亡率が高くなっているためだという結論です。
 
表5.平均寿命が30歳代になった国

国 名
平  均  寿  命  
人口、人(A)

エイズ患者数(B)

B/A %
期 待 値 実 際 値
ジンバブエ
マラウイ
ザンビア
スワジランド
64.9歳
51.1歳
56.2歳
58.5歳 
39.2歳
36.6歳
37.1歳
38.5歳 
 11,000,000
  9,800,000
  9,500,000
  1,000,000
   70,669人
   50,975人
   44,942人
    2,939人
0.6%
0.5%
0.5%
0.3%
 
 老人より子供や青年がより多くエイズに罹って、感染して数年後には高率に死亡することを示しているのです。なぜ平均寿命が40歳代以下になってしまったのかという原因や背景よりは、このような数値はこの国の国民に対して何を暗示しているのかを考える必要があると思いました。
 
 平均寿命が短くなったことは、年寄りの減少を大きく上回って子供を含む若い人が全体的に減ってきていることだと思います。子供は国の将来を担う国にとって大切な宝物的な存在です。その意味で子供の数が減ることは、決して良いことではありません。さらに青年男女の数が減ることは、国の生産性を下げることになり、また働き手が少なくなるだけでなく、生まれてくる子供の数も減ることを意味します。このような事柄を深刻に考えると、国や民族が滅びることもあり得ることになります。平均寿命が短くなることは、極めて深刻な問題なのです。国家と民族をも消滅させるようなエイズの破壊力を示した物語でした。
 
5.微生物学のあゆみ
 肉眼で見えない微細な生物を微生物といいます。微生物学で取り扱う対象は、光学顕微鏡的な大きさで単細胞である細菌など(原核生物)、真菌など(真核生物)および電子顕微鏡的な大きさのウイルスに限られます。
 
 細菌やウイルスは、微細な生き物ですが、その大きさはどのていどなのかを知るために、私達の身体を構成している細胞の代表として赤血球を取り上げ、その大きさと比較し、まとめたものが表6です。1センチの距離に赤血球は約1,500個、黄色ブドウ球菌のような細菌は約10,000個、さらにウイルスは100,000個も入ってしまいます。
 
表6. 細菌とウイルスの大きさの比較
対象物 標準的な大きさ 1cmに並ぶ数 1ccに入る数
赤血球
細菌
ウイルス
7マイクロメーター
1マイクロメーター
100ナノメーター
1,500個
10,000個
100,000個
34億個
1兆個
1,000兆個
 
 微生物学は、微生物を観察するための道具としての顕微鏡と微生物の数を増やすための技術としての培養の新技術の開発に伴って進歩してきました(表7)。オランダのレーウェンフックは、二枚のレンズを使って自家製の顕微鏡を作り、これで微小生物を観察(1683)して、微生物学の扉を開きました。次いでフランスのパストゥールは乳酸発酵(1850)、牛乳の加熱滅菌(1866)や狂犬病ワクチン(1885)、ドイツのコッホは細菌の純粋培養(1876)や結核菌の発見(1882)などの発明や発見をしました。
 
表7.顕微鏡の分解能
顕微鏡の種類 備  考
光学顕微鏡
 
可視光線を利用する限り、分解できる2点の距離が約200nmよりも小さくなることは理論上あり得ない
電子顕微鏡 透過型電子顕微鏡は、固体表面の凹凸を4Åの分解能で測定可能
原子間力顕微鏡
 
大気中は勿論、水中でも固体や場合によっては液体もその表面の凹凸を1?10nmの分解能で測定することのできる顕微鏡
 
 微生物は発見された時代とその大きさなどから、大きく3群に分けられます。それを簡単にまとめたものが表8です。
 
表8.微生物の時代的分類
第1世代の微生物
 肉眼ではみえない、光学顕微鏡で可視、基本構造は生物共通の細胞、
 例:細菌(レジオネラ菌、赤痢菌、コレラ菌)、特効薬あり、治療が可能.
第2世代の微生物
 光学
顕微鏡でみえない、電子顕微鏡で可視、基本構造は細胞でなく粒子、
 例:ウイルス(インフルエンザウイルス、エイズのHIV)、特効薬ナシ、治療法なし.
第3世代の微生物
 電子顕微鏡でもみえない、基本構造は未詳、耐熱性、遺伝子ナシ、
  例:プリオン(狂牛病、ヤコブ病)、治療法なし、                
 
 更に、分類の仕方に依っては、正真正銘の生物としての微生物と無生物的な微生物とがあります。真核生物である真菌や原核生物である細菌は、生物共通の基本構造である細胞という生命単位から出来ています。しかし、無生物的な微生物であるウイルスは遺伝物質である核酸とそれを守ための保護膜としてのタンパク質から出来ている微細粒子です。プラスミドやウロイドは、核酸のみから出来ています。更にプリオンは、タンパクのみから出来ていると考えられています(表9)。
 
表9.微生物の分類(構成物)
生 物
   
    
真核生物
   
 動物 原虫
 植物 真菌                     
原核生物   植物 細菌、スピロヘータ、クラミジア、リケッチア   
無生物

   


     
 ウイルス (核酸とタンパクのみ)
 プラスミド・ウロイド (核酸のみ)
 プリオン (タンパクのみ)            
 
 いま現在普通に使われている顕微鏡の種類とその拡大率を表10にまとめて示しました。電子顕微鏡でも見えない微生物は、今後新たに発見されることはないのではと思います。そうすると、表9にまとめた核酸とたんぱくから構成されているウイルス、核酸のみでできているプラスミドとタンパクのみからなるプリオン以外に脂質や糖質のみから構成される新たな微生物は存在しないものと考えられます。
 
表10.顕微鏡で観察できる対象物
顕微鏡の種類 観察可能な大きさの範囲 研究可能な大きさの範囲
ヒトの裸眼 0.1mm(=100μm) 真菌 1〜10mm
明視野照射 0.3μm ヒト赤血球 7.5μm
UV照射
 
0.1μm
 
ミトコンドリア 0.2〜5μm
細菌  0.1〜20μm
電子線・走査電子顕微鏡
 
25nm
 
インフルエンザウイルス 85nm
微生物の鞭毛 12〜30nm
電子線・透過型電子顕微鏡 4Å 分子
 
 それでは、これから新しい微生物はもはや発見されないのかという疑問がわいてきます。ある資料によると表11にまとめたような情報を導き出すことができます。ウイルスや真菌は、いま現在までに発見されている種の数は、存在が予測されている種の数の数パーセントにすぎない。細菌でも88%の未知なる種が存在する可能性がうかがえるのです。
 
表11.存在が予測される微生物種の数
微生物の種類
 
同定されている
微生物種の数(A)
存在が予測される
微生物種の数(B)
A/B
(%)
ウイルス 5,000 130,000
真菌 57,000 1,140,000
細菌 5,200 43,300 12
原虫 31,000 100,000 31
藻類 27,000 40,300 67
 基礎病原微生物学(檀原・田口編著) 広川書店・東京に記載されている表を一部改編した。
 
 この表11にある「存在が予測されるがいま現在も発見されていない微生物種」とは、何を意味しているのでしょうか。これまでの微生物学では、微生物を増やすことでその存在を確認してきました。死んでいる微生物は、原則として増やせないので、その存在を確認することはできませんでした。たとえ死んでいて増えない微生物でも遺伝子の核酸が存在するのであれば、その核酸を増幅して検出する技術が確立されてきました。このように核酸をターゲットにして調べると、これまでに知られていない微生物の存在が予測されるのです。
 
 生きているが増えない(増やせない)微生物が世の中にはまだ数多く存在することが段々と判ってきました。増えないまたは増やせない(培養できない)微生物を「存在が予測される微生物種の数」として表示されています。肝炎ウイルスやライ菌などのように、現代人が最先端の技術を駆使しても培養できない微生物を増やすためには、いまの常識では考えられない革新的な発想と技術を開発する必要がありそうです。これからの微生物学や微生物による病気の研究は、ナノテクノロジーに頼らなくてはならないのかもしれません。これからの若い科学者に将来の夢を託すことになります。さあー、君ならどうしますか、逃げますか、それとも挑戦しますか。
 
『完』
平成20年4月10日
著作者 田口 文章(ふみあき)

 
 

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