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309.セラチア菌がサンゴを食いつくす.1-10-2003.

サンゴの大量死.

米国科学アカデミー紀要にサンゴの伝染病について掲載されていることを琉球大学理学部海洋自然科学科の教授山口正士先生からの連絡で知りました。さっそく山口先生のメールに書かれていた「米国科学アカデミー紀要」を調べてみました。The etiology of white pox, a lethal disease of the Caribean elkhorn coral, Acropora palmatePNAS 99 : 8725-8730, 2002)【カリブ海のエルクホーンサンゴの致死性疾患「白痘」の病因】という論文が見つかりました。

 

分野が違うと専門用語の意味が正確には理解できませんので、一般向け科学ニュースとして南日本新聞に「サンゴの大量死」という記事が掲載されていることも山口先生のメールには合わせて書き記してありましたので、インターネットで検索してみました。

<http://www.bg.wakwak.com/~fin/sango-simetu.htm>を開くと「サンゴの大量死」という見出しの記事があらわれ、以下のように書いてありました。

 

≪カリブ海で1990年代から発生しているサンゴの大量死は、人間の腸内や排せつ物などに含まれる微生物、セラチア菌が原因であることを米ジョージア大などの研究チームが確認、17日、米科学アカデミー紀要に発表した。この大量死はカリブ海で多く見られるエルクホーン(鹿の角)と呼ばれるサンゴの表面が白く変色することで起きる。96年にフロリダ州で確認された後、カリブ海の広い海域に拡大。ひどい場所ではこのサンゴの98%が死滅した。チームのジェームズ・ポーター教授は「下水中に含まれる細菌が、サンゴに悪影響を与えることが確認されたのは初めて。鹿児島や沖縄など世界各地のサンゴに同じようなことが起こっていないか、早急に調べる必要がある」と警告している。研究チームは、病気のサンゴからさまざまな細菌を分離して培養。細菌を実際のサンゴに感染させる実験などを行い、病気の原因がセラチア菌であることを突き止めた。セラチア菌は人間や他の動物の排せつ物中に含まれることが多く、チームは、処理が不十分な下水の流入が、病気の拡大を招いているとみている。≫(2002619日 南日本新聞記事より).

 

科学用語の解説.

私にはwhite poxという最初の言葉から意味が解りませんでした。Poxという単語は、私達にも馴染のある用語で、「水泡性または膿泡性の病気」を意味します。例えば、水疱瘡(みずぼうそう)をchicken pox、天然痘をsmall poxと書きます。White poxは、和訳すると「白痘」となります。「白痘」は、一般的な病気ではありませんが、ヒトの病気としては現存します。

 

そこで厚かましくも山口先生に用語の解説をお願いしました。

問い1.white pox およびwhite pox diseaseの和名と特徴はなんでしょうか?

サンゴの病気は以前からいくつか知られていますが、特に和名は付けられていません。画像と症状は次のURLにあります。他の病気も他のサイトで説明があります<http://ourworld.compuserve.com/homepages/mccarty_and_peters/coral/poxpage.htm>と<http://ourworld.compuserve.com/homepages/ mccarty_ and_peters/coral/poxpage.htm>。

問い2.shallow water speciesshallow water fore reefとは、elkhorn coralとは場所でしょうか種類でしょうか。

 elkhorn coral Acropora palmata(学名) の一般名です。ヘラジカの角に似た形のサンゴ群体であるため、このように呼ばれています。水深5m程度までの極めて浅い海底に大規模に生育する、大西洋のサンゴ礁の水中景観を特徴付ける種類(shallow water species)です。今のところ、今回の病気はこの種だけに特有です。fore reef というのは、サンゴ礁の(外洋に向いた)沖側で白波が砕けている場所(礁縁)からスロープ(礁斜面)にかけてのゾーンを言います。このサンゴはこのゾーンにもっとも多く生育します。通称staghorn coral 学名 Acropora cerivicornis http://www.holchanbelize.org/coral1.html>これもオス鹿の角に似ているための呼び名です。両方とも、大西洋産であって、太平洋に同じ種のサンゴはいません。従って、和名はついていないと思います。ワシントン条約で保護されているし室内飼育に向かないサンゴですから、おそらくペット産業でも扱われず日本名は必要となっていないと思います。
問い3.Acropora palmata A. cervicornisの和名と特徴および日本近海にも存在しますか?

Acroporaという属のサンゴは太平洋にも分布していて、一般に「ミドリイシ」属と呼ばれていますので、上の大西洋種は、ミドリイシの仲間としてよいでしょう。

最近、サンゴの異常な状態(腫瘍のように見えるものなど)も増えていて、水質汚染や微生物の影響などが懸念されています。陸上起源の農薬などが影響している可能性も疑われます。サンゴだけでなく、沿岸生物が全体的におかしくなっているので警戒しなければなりません。

 

セラチア菌が海水環境においても繁殖してサンゴに対する毒素を生産するとなると、沖縄にも起こりうることで、警戒が必要かもしれません。(大西洋で影響を受けているサンゴは1種だけです) 以上山口先生のコメントです。

 

セラチア菌.

セラチア菌 Serratia marcescens は、霊(れい)菌とも呼ばれます。病気を起す細菌を専門とする学者からすると、霊菌は雑菌のように考えていることが多いので、セラチア菌の環境中での動態や生態についてはあまりよく解っていません。そのため私達が使っている教科書でのセラチア菌についての記載内容は、非常に乏しいものです。

 

ヒトや動物に由来するセラチア菌が海水(塩濃度は3.5%程度)で増殖できるのか、なんパーセントの塩濃度で死滅するのかなどは、判っているのか調べられていないのかも残念ながら良く判りません。多分調べられていないと思います。

 

さて「290に乾燥に強いセラチア菌.7-19-2002.」とい文を掲載してあります。そこに掲載してある試験結果を別な側面から考えると、セラチア菌はかなり高濃度の塩濃度環境でも生存できることを示唆していると解釈できます。海水の塩濃度程度では、生理食塩水中と同じように活発に増殖できるのでしょう。とすると、PNASに報告されたように汚水処理が充分でないと、海水中でサンゴがセラチア菌に食われてしまうことは、今後世界的に拡大される可能性が危惧されます。

 

セラチア菌にも種類が多々ありますが、そのうち日和見感染を起す人由来のセラチア菌による海水汚染とは驚きです。環境由来の微生物が人集団に入り込むケースとその逆に人から環境に出る(最後にまた人に戻る)ケース等かあります。生態系を維持するのは容易なことではないのでしょうが、維持できないと最後には大変なことになるのでしょう。

 

 

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