▲▲  ▼▼

362. 眼のウイルス感染. 5-10-2004.
 
プール熱
ウイルスによる眼の感染症は、アデノウイルスによる結膜炎とヘルペスウイルスによる角膜炎が多い。毎年100万人もの多くの人が感染する流行性角結膜炎は、感染力が強く、眼科領域では最も多い流行性疾患で、その大半がアデノウイルスによるものです、新しい血清型(ウイルス粒子表面のタンパクの免疫学的な違い)の出現や冬場にも流行するようになってきました。
 
アデノウイルスによって起こる病気は、多岐にたって複雑ですが、流行性角結膜炎の原因となるアデノウイルスの血清型はB群の3型、7型と11型、E群として4型、D群の8型、19型と37型が報告されています。流行性角結膜炎と推測される症例の約10%は単純ヘルペスウイルスやクラミジアによるとの報告もあります。またアデノウイルス結膜炎の3%に尿路感染由来のクラミジアが、7%に細菌が重複感染しているとの報告もあります。
 
一方、咽頭結膜炎は、3型のアデノウイルスによるとされています。3型のアデノウイルスは、かつては夏かぜのおもな原因ウイルスとして知られ、成人のほとんどが免疫抗体を持っていました。しかし、近頃はその抗体保有率が低下してきています。アデノウイルス結膜炎が夏に覆い理由は、流行性角結膜炎や咽頭結膜炎が俗に「プール熱」と呼ばれていることからも分かるように、夏かぜから快復した小児の糞便と一緒に排泄されたアデノウイルスがプールの水を介して感染を拡大しているからと考えられています。
 
アデノウイルスが検出された患者の年齢は、3型と7型は4才をピークに検出され、15才以上の者からも検出されます。ところが1型、3型と5型は、1才をピークに低年齢層から検出されています。アデノウイルスは、酸アルカリ、界面活性差剤やアルコールおよび乾燥に抵抗をしめします。そのため消化管内では死滅せず、生きたまま糞便とともに排出されてしまいます。
 
アデノウイルス結膜炎の院内感染
ちょうど一年ほど前に「284.ドアの取っ手からも感染する.5-30-2002.」を書き掲載しました。眼科で使用する器材からもアデノウイルスの感染が拡大していることを紹介しました。バイオメディカルサイエンス研究会から発行されている「WORLD FOCUS」(No.57,2004年4月15日)に北海道大学の大口剛司先生による「大学病院におけるアデノウイルス結膜炎の院内感染」についての報告が掲載されています。その概略を紹介します。
 
1993年から2002年までの10年間に発生した院内感染を対象に、全国の大学病院眼科93施設にアンケート調査を依頼した。62施設(66.7%)から回答が寄せられました。過去10年間にウイルス性結膜炎による院内感染を経験した施設は49施設の79%におよんだ。院内感染の発生場所は、入院病室のみが33施設(70.2%)、入院病室と外来で同時に発生したのが12施設(25.5%)、外来のみが2施設(4.3%)であった。発生患者数は、10名未満が16施設(32.7%)、10名から30名が16施設、30名以上が13施設であった。感染ルート(確定と推定)は、診療器具が28施設、入院患者が23施設と医師が17施設であった。院内感染が発生してから執られた対策は、発症者の強制退院32施設、個室への隔離29施設、新規入院者の受け入れ停止27施設、全員を退院させ病棟を閉鎖16施設、入退院の制限なし5施設であつた。
 
結果として院内感染の発生により、発症者の強制退院または個室での隔離、新規入院患者の停止、病棟閉鎖などの対策をとった施設がほとんどであった。これらにより医師や病院への不信感、病棟閉鎖による経済面での負担に繋がるため、院内感染を発生させないのが一番である。万が一に発生させてしまった場合は、早期発見と早期診断により発生を最小限に留めること、患者への誠意ある対応がなによりも大切であると、今後の期待される対策について述べられている。
 
前にも触れましたがアデノウイルスは、アルコールを含めた一般の消毒薬に抵抗性を示します。感染している患者に薬剤の点眼に使用した点眼ビンにウイルスが付着することも考えられます。点眼ビンをアルコール綿で拭ってもウイルスを拡散させてしまう結果になり、ウイルスを殺すことは期待できません。院内感染は、医療施設と患者の双方に不利益を生み、患者および家族に精神的な苦痛も与えます。言葉でなく実際に院内感染を防ぐにはどうしたらよいのでしょう。

▲▲  ▼▼



Copyright (C) 2011-2017 by Rikazukikodomonohiroba All Rights Reserved.