▲▲  ▼▼

363. 細菌によるヨーネ病とクロン病. 6-10-2004.
 
難病のクロン病について調べものをしていました。するとヨーネ菌が関与するクロン病の症例があるらしいことに気がつきました。お恥かしいことですが、私はこれまでにヨーネ病およびヨーネ菌について知識をあまり持ち合わせていませんでした。家畜細菌学および家畜感染症学ではヨーネ菌とそれによるヨーネ病は重要であることも初めて知りました。そこでヨーネ病とヨーネ菌について知りえたことを紹介しようと思います。
 
ヨーネ菌
ヨーネ菌の名前は、1895年に現在のヨーネ病を初めて記載したJohne と Frothinghamに由来し、Johneをヨーネと発音させている。このヨーネ菌は、結核菌が属する抗酸性菌群のMycobacterium avium(鳥型結核菌)の亜種に分類されている。ヨーネ菌は、抗原的にもM.aviumとの交差反応が強く近縁であることが分かります。ヨーネ菌は、鳥型結核菌との違いは、肉眼で観察できる程度の集落(コロニー)を形成するのに8日から16日を要し発育速度が非常に遅いこと、更に発育にマイコバクチン要求性である点です。マイコバクチンとは、抗酸性菌が産生する鉄キレート物質(ジデロフォア)の一種です。ヨーネ菌は、このマイコバクチンの産生能が低いので、マイコバクチンを添加しないと発育できません。そのためヨーネ菌は、M.aviumのように土壌や湖沼水中で増殖することはないのです。ヨーネ菌は、人畜共通感染菌ではないと考えられているので、人への病原性はないと思われます。
 
ヨーネ病
ヨーネ病は、腸管組織へのヨーネ菌の感染によって引き起こされる難治性の下痢を主な症状とする慢性肉芽腫性腸炎です。この病気は、1895年にJohne とFrothinghamによってparatuberculosisとして記載されました。家畜伝染病予防法では、牛、綿羊、山羊、水牛、鹿が貿易対象の動物です。海外では、ヤク、アルパカ、ラクダなどの反芻動物に加えて野ウサギ、キツネ、ベニカオザル、マンドリルでの自然感染が報告されています。
 
家畜の糞便で汚染された、初乳、飲み水、飼料などがヨーネ菌の主要な感染源で、感染した牛の糞便には、100万から1億個(CFU)/gのヨーネ菌が検出され、妊娠で細胞性免疫が低下する分娩前後には排出菌量は増える。回腸のパイエル板から侵入する、感染1年以内に発病することはほとんどなく、3歳から5歳には病気のピークがある。症状は、間欠性の下痢と削痩である。乳牛は、乳量が著しく低下し、乳質低下がみられる。間欠性の下痢、水様性持続性下痢へと進み、極度の栄養状態の劣化から1年前後で衰弱死にいります。進行症例では、詳細は省略しますが興味ある病理像を呈します。
 
ヨーネ病の発生状況
ヨーネ病は、1971年に家畜法定伝染病に指定されている。国内での発生頭数は徐々に増加している。感染源も頭数も米国産案ガス牛である。2002年までの5年間に200万頭の牛が検査され、最も発生頭数の多い北海道では0.06%(334/544,666頭)が陽性であった。補償殺処分頭数は4,869頭で、その費用は10億円を超えた。
 
牛乳のヨーネ菌による汚染
1991年から1993年の英国での調査では、市販牛乳の312検体中PCR法で22検体7%、培養法で45検体15%が分離陽性であった。1999年から2000年にかけて567検体を調査した結果、67検体12%がPCR陽性で10検体1.8%からヨーネ菌が分離された。カナダで行われた調査でもほぼ同様の結果で、63.5℃で20分間の加熱で牛型結核菌は完全に死滅したが、ヨーネ菌は完全殺菌には40分間の加熱が必要であった。
 
クロン病との関係
クロン病は、ヒトの原因不明の肉芽腫性病変を伴う慢性の炎症性腸疾患で、世界的に存在する。1984年に米国の4人のクロン病患者の腸管からマイコバクチン依存性の抗酸性菌が始めて分離されました。また1993年になってクロン病患者28人中6人の腸管組織からPCR陽性の抗酸菌を分離されました。患者由来菌は、培養時の発育速度が極めて遅く、集落のサイズも小さく、抗酸染色性も低い状態であった。
 
菌の分離培養が困難であるため、その後の研究では、遺伝子を検出するPCR法が主に用いられるようになった。オーストラリア、イギリス、フランス、アメリカなどから報告があるが、クロン病の組織は陽性であっても対照として用いた類似の疾患(潰瘍性大腸炎、非炎症性腸炎、非炎症性消化器病)でも無低いながら陽性を示したりしている。クロン病とヨーネ菌との関係は、否定的な報告が多いようです。
 
 
PCR法は、迅速で感度が高い現代の素晴らしい技術です。しかし万能ではありませんで、問題がない訳でもありません。一般論として病原因子を証明する方法としては、菌を培養して分離することが一番確実な方法なのです。しかし、その菌の培養が時間がかかり結果して難しいとなると、いきおい核酸を検出するPCR法にはしがちです。今回紹介しましたヨーネ菌のように発育速度が極めて遅いと、培養してヨーネ菌が分離されたとの報告があっても、PCR法を用いた方法が数多く成され結果が否定的であると、全体としてはクロン病とヨーネ菌との関係は薄いと判断されます。もしもクロン病が細菌の感染による病気であることが証明されると、原因が判ったのですから治療も可能性がでてきます。もう少し時間をかけるとより正確な情報が得られるでしょう。

▲▲  ▼▼



Copyright (C) 2011-2017 by Rikazukikodomonohiroba All Rights Reserved.