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415. C型肝炎ウイルスの培養. 8-7-2005.
 
型肝炎ウイルスは培養できない
C型肝炎ウイルスHVCは、全世界で肝臓の病気の主な原因となっています。HVC による肝炎は、急性肝炎の約15%、慢性肝炎の60%から70%、末期の肝臓疾患である肝硬変と肝癌の50%を占めていると言われています。米国で公表されている数値では、約400万人、人口の約1.8%がHVC に対する免疫抗体を保有しているとあります。このことは、現在HCVに感染しているか、または過去に感染したことがあることを示していることになります。日本国内では200万人、全世界では1億7千万人ほどの感染者がいると考えられています。日本国内では調べてみないと判りませんが、米国では毎年1万人から1万2千人の感染者が死亡しているとあります。
これだけ感染者や肝硬変から肝癌に悩まされている患者が全世界に多く存在していることはなぜなのでしょうか。それはC型肝炎ウイルスを人間はまた生体外で増殖させることが出来ないからです。培養した肝細胞などで増殖させられるモデル系が存在しないことが、C型肝炎の研究を進めるうえで大きな障害となっています。
 
C型肝炎ウイルス培養系の確立
米国衛生研究所の肝臓疾患部門のT.J.Liang博士らの研究グループが、C型肝炎ウイルスを実験的な複製(コピーを作ること)に成功し、学術雑誌にその成果を発表しました(PNAS 102:2579-2583, 2005)。研究内容は、極めて専門的ですから、簡単に説明するのも難しいのでが、本当に概略をお知らせいたします。
C型肝炎ウイルスは、小型のエンベロープを持つ一本鎖のRNAを遺伝子とするフラビウイルス属のウイルスです。Liang博士らが実験に用いたウイルスは、ヒトに感染する主な型で現在の治療に最も強い抵抗を示す一型ウイルスを選択しました。最初にC型肝炎ウイルスHVC の一本鎖のRNAから塩基配列が対になるDNAを複製(コピー)し、このDNAを(仮の)ウイルスとして用いました。ここから更に難しくなりますが、複製されたDNAを二つのリボザイム(RNAの塩基配列の特定の部位を切断する酵素機能を持つRNAのこと)の間に挿入しました。二つのリボザイムは、HVCゲノムの遺伝子活性の開始と停止のスイッチとして機能するように作られています。リボザイムで切り出されたHVCのゲノムは、ウイルスの遺伝物質であるRNAの裸の状態で、エンベロープの被膜で覆われてないウイルスとしては不完全な形です。この裸のHVC のゲノムRNAを培養したヒトの肝細胞に導入しました。
ヒトの培養肝細胞にウイルスの遺伝子を導入された細胞内でHVCのタンパク質と遺伝子であるRNAが作られていることが確認されました、さらに細胞外には完全な形のウイルス粒子が高濃度に存在していることが電子顕微鏡で確認されました。
これらの観察結果は、肝細胞内のHVCゲノムが本物のHVCゲノムと同じように機能し、完全な形のウイルス粒子を複製し、細胞外に放出していることを示していると考えられます。
 
この報告の研究は、まだ完成しているわけではありません。電子顕微鏡で認められた複製されたウイルス粒子が肝細胞に感染し、更に子孫のウイルスを作ることが証明される必要があります。しかし、ここまで研究が進むと、今後の研究の成果に大きな期待が持てます。例えば、C型肝炎ウイルスの複製を抑制する物質(治療薬)のスクリーニングが実施可能となり、更にはワクチンの開発へと研究は進むものと思われます。

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