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448. ガムをかんでガンを予防.10-10-2006.
キーワード:L−システイン ガム アセトアルデヒド 癌抑制
 
発癌因子アセトアルデヒドを不活化
ヘルシンキ大学内科学のサラプュロ(M. Salapuro)教授らは、L−システインがだ液中の発ガン性物質のアセトアルデヒドを分解することを発見し、L −システイン入りのチューインガムを開発しました。アセトアルデヒドの人体内濃度が高い喫煙者や飲酒者は、だ液中のアセトアルデヒドを中和するL −システイン入りのガムをかむことで、口腔、食道、咽頭など上部消化管の発癌リスクを抑制できる可能性がでてきました (Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention 15: 146-149, 2006)。最初にアセトアルデヒドについて少し説明をします。
 
フランス人のワイン好き
日本人にはお酒を飲めない人およびお酒に弱い人が大勢います。パリに滞在していたときフランス人家庭の夕食に招かれたことがありました。手作りの美味しいフランス料理にあわせてワインを頂いているうちに、自分の顔が赤くなるのが判りました。奥さんが私の顔が赤いのを見て「ムシュー タグシ  気分でも悪いですか」と心配してくれました。一昔前のフランスでは小学生でも、お弁当と水筒につめたワインを持参して学校に通ったそうです。冬の寒い日には、誰かが「先生 寒いよー」と言うと、「それでは、命の水(フランス語でワインのこと)を飲みましょう」となったのだそうです。フランスなどでは、ワインで顔が赤くなったり、脈拍や呼吸が早くなったりする人はほとんどいないのです。アルコールに強いからです。
 
日本人がアルコールに弱い訳
アルコール飲料を飲んで体内に入ったエチルアルコールは、胃や小腸から吸収されてアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドへと分解されます。アセトアルデヒドは、毒性のある化学物質ですから、肝臓のアセトアルデヒド脱水素酵素で酢酸に分解されて無害化されます。
 
アセトアルデビドを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素は、517個のアミノ酸からなるタンパクで、517個のうち487番目のアミノ酸を決める塩基配列の違いにより、3つの遺伝子型に分類できることが分かっています。グアニンを2つ持っているGGタイプと、グアニンの1つがアデニンに変化したAGタイプ、2つともアデニンになったAAタイプです。AGタイプのアセトアルデヒド脱水素酵素は、アセトアルデヒドを分解する力がGGタイプの約6%と弱く、AAタイプのアセトアルデヒド脱水素酵素にいたっては代謝能力がほとんどありません。
 
アセトアルデヒドは毒性の強い物質で、悪酔いや二日酔いなどの原因となります。アセトアルデヒド脱水素酵素の活性が弱いと、アセトアルデヒドが体内で分解されないで体内に長く留まることになります。AGタイプやAAタイプは、アセトアルデヒドの毒性の影響を受けやすい体質となります。そのため、一般的にこのタイプの人は、お酒に弱い人、もしくはお酒を飲めない人となります。この遺伝子型は、生まれつきの体質です。お酒に弱いAGタイプまたはお酒が飲めないAAタイプは、蒙古系人種に約45%または約5%のみ認められ、白人や黒人は全てお酒に強いGGタイプなのです。
 
L−システイン・ガムの効力
これまでの先進国における上部消化管の発癌の最大80%までが、喫煙と飲酒によることが示されています。さらに喫煙や飲酒の有無にかかわらず、胃ガンの危険因子とされる萎縮性胃炎や無酸症にアセトアルデヒドが関与しているとされています。
アセトアルデヒドを不活化する酵素遺伝子の突然変異により、突然変異遺伝子型の日本人には、消化管の発癌が有意に増加することが日本人研究者(筑波大学の原田勝二ら?)によって報告されているようです。この発表にもとづきサルプュロ教授らは、アセトアルデヒドを除去する遺伝子に突然変異のあるアジア人をさがしだしてアセトアルデヒドの濃度の検討をしました。その結果、少量飲料後でもだ液ちゅうのアセトアルデヒドの濃度が対照者と比較して、2倍から3倍に達することを確認しました。
そこで7人の志願者を対称にL−システインを徐放するチューインガムを用いて実験を行った。その結果、タバコ5本の喫煙中にL−システインを5ミリグラム含むガムをかむことで、ダ液中のアセトアルデヒドが完全に不活化され、同時に体内濃度が大幅に低下しました。
 
このガムは、1990年代からヘルシンキ大学で研究されてきた成果で、この研究により消化管フローラで産生される限局性アセトアルデヒドが発癌リスクを高めていることが確認されました。L−システインの補給効果は、喫煙者や飲酒者に限らず、またアセトアルデヒドが主に喫煙や飲酒により産生されるが、一方、糖分や炭水化物を多く含む食品によっても生産されることから、サルプュロ教授らは全消化管へりL−システインの補給を目的とした徐放薬を開発中であると述べています。
 
 
アセトアルデヒドは、毒性の強い物質で、一般的には悪酔いや二日酔いなどの原因となりますが、大量に摂取すると呼吸困難により死亡することもあります。さらにシックハウス症候群という現象に、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドが原因物質として関与しています。アセトアルデヒドを分解するアセトアルデヒド脱水素酵素は、アルデヒド分解酵素の一種です。
ヘルシンキ大学のサラプュロ教授らのL−システインがダ液中の発ガン性物質のアセトアルデヒドを分解するとの発見を拡大解釈すると、次のようなことが考えられます。
注射をするときにアルコールを含ませた綿球で注射する部位を消毒します。お酒に弱いAGタイプまたはお酒が飲めないAAタイプのある人は、アルコールに反応して皮膚が真っ赤になることがあります。このようなアルコールに弱い人でも『L−システイン入りのチューインガム』をカムことによって、ワインなどのアルコール飲料を飲めるようになるかもしれません。
さらにホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドによるシックハウス症候群に悩まされている人が『L−システイン入りのチューインガム』をカムことによって、呼吸困難などの症状を軽減でき、入れなかった部屋にも居られるようになるかも知れません。このように考えると、シックハウス症候群の人は、アセトアルデヒド脱水素酵素の遺伝子型がAGタイプまたはAAタイプなのかも知れません。シックハウス症候群は、遺伝子治療が可能な疾患となる可能性に期待がもてそうです。

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