第33話
 目で見える世界と頭の中の世界
 

 
 
「主な読者の対象」
今回の対象者は小学生以上です。特に、親御さんと一緒に読まれることを希望します。
内容的には、「ものの見方考え方」に書いてある内容を引っ掛け問題に応用したものです。かなりレベルを下げてありますので、小学生以上なら楽しめると思います。
 
 
 
本 文 目 次
3.赤道
著作:坂田 明治
 

 
 
第33話 目で見える世界と頭の中の世界
 
1.位置の問題
 のっけから問題です。
「まず南へ1km進み、次に東へ1km進んで、最後に北へ1km進むとき、最初の位置との位置関係は?」
 
 大概の人は、図1を描き、最初の位置から東に1kmの地点だと答えるでしょう。
 
2.最初の位置
 私は、かねがね「地球は平らだ」と主張しています。そして、「地球が丸いというなら、国産の往還機(おうかんき。宇宙まで出て戻ってこられるロケット機のこと)を開発して、ただで乗せて、地球周回軌道を一周させてみろ。そうしたら地球が丸いというのを信じてやる」と言っています。こちらは、条件提示しているのだから、その条件を満たせばいいだけなのですけどね。相変わらず無視されています。「お前なんか地球が丸いと信じなくてもいい」ということでしょうか。この辺の話は、理科好き子供の広場の第2話「ものの見方考え方」にあります。
 
 まあ、それはともかく、図1みたいな回答をしている人は地球が平らだと思っている人達です(ほとんどの人がそうですね!)。どうも頭では地球は丸いと解かっているが、体では解かってないということでしょうか。なお、ここでは地球が多少いびつだとか、そういうことは考えないことにします。
 
 地球が丸いというなら、当然、考えは極地付近にも及ぶはずです。例えば北極を考えてみましょう。北極から、南へ1km進み、次に東へ1km進んで、最後に北へ1km進むと北極へ戻ってきてしまいますね。つまり、最初の位置から東に1kmにはなりません。
 
 北極でなくとも、北極の近くで考えても、図3のようになり、やはり、最初の位置から東に1kmにはならないことが解かります。
 
 南極付近でどうなるかは自分で考えてみましょう。
 
 もし、地球が丸いというなら、当然、このようなことを考えるべきです。自分の位置、自分の目に惑わされて(まどわされて)、図1のような回答をしているようでは、頭では解かっていても体で解かってないといわれても仕方ありません。
 
3.赤道
 今度は赤道に関しての問題です。赤道は4万kmもの長さです。
 
 では、赤道に紐(ひも)を巻きつけ、その紐に1m継ぎ足したら、4万km+1mのひもは赤道からどの位浮き上がるでしょうか。「4万kmに1m位足したって、ほとんど変らないから浮き上がらない」という回答が多いようです。さて、みなさんの回答はどうでしょうか。
 
 意外なことに、高学歴者でもちゃんと回答できない人がおります。こちらの方が、第一章の問題より正解率は高いのですが。ただ、正解を出しているにも関わらず、その回答が信じられないという人も多いようです。
 
 では、回答を考えてみましょう。地球の半径は約6400kmですが、いちいち数字を書くのがうっとーしいので、半径はRとします(単位込みです)。赤道は円周と考えていいので、
 
赤道の長さ = 2πR  (πは円周率です)     (1)
 
となります。赤道の長さは4万kmですから、
 
4万km = 2πR                    (2)
 
です。
 
赤道に1m継ぎ足して、半径がrだけ大きくなるとすれば、
 
4万km+1m = 2π(R+r)            (3)
 
ですので、
 
4万km+1m = 2πR+2πr            (4)
 
となりますね。
 
(4)−(2)を計算して、
 
1m = 2πr                      (5)
 
です。rについて解くと、
 
r = 1m/(2π) ≒ 100cm/(2×3.14)
  ≒ 16cm                      (6)
 
となります。
 
 つまり、赤道に1m継ぎ足すと、赤道から約16cm浮き上がるということです。これを聞いて、「そんなバカな!!」と思う人も多いかと。これが正解を出しているにもかかわらず、その回答が信じられないという人達です。
 
 上の計算をよく見ても、どこも間違いはありません。それどころか、赤道の長さも、地球の半径も関係ありません。(4)−(2)を計算した段階で消えていますね。つまり、円であれば(点でもよい)なんであっても結果は同じです。
 
 
 茶筒や10円玉などに紐を巻きつけ、それに1m継ぎ足してみたり、最初から1mの紐を輪っかにして半径を計って実験しましょう。計算結果の通りになることが確かめられます。
 
 計算上は解ったとしても、なんだか変な感じのする人が多いようです。原因を考えてみましょう。まず、4万kmは我々の感覚から離れた途方もない大きさです。しかし、1mは我々になじみのある大きさです。頭の中では、「4万kmに1m位足したってほとんど変わらないじゃないか」(要する無視しても一向に差し支えないということ)と思っています。ですから、赤道からどの位浮くかって聞かれても、「ほとんど浮かない」と考えてしまいます。
 
 ところで、16cmというのは、我々になじみのある大きさですから、16cm浮き上がるとなると、「あんなでかいものに、ほんのちょっと、無視してもいい位付け足したら、こんなに浮き上がった」という不思議な感覚におちいります。
 
実際には、地球の半径は約6400kmですから、
 
16cm/6400km ≒ 0
 
となり、無視してもいいような量です。変な感じがするのは、6400km(これも近似値なんだけども)という途方もなく大きな量と、我々になじみのある16cmという量を同時に考えているからです。つまり、我々の目では把握できないスケール(尺度)で考えなければならないときに、我々の目からくるスケール(尺度)を持ち込んで比較しているということです。このために我々の感覚が狂わされてしまっているのです。
 
4.海岸線の長さ
 色々な国の国境線を見ていくと、隣り合った国で発表している国境線の長さが違っていたりします。ほんのちょっと違うなんて代物ではなく、倍半分(2倍とか1/2とかそういうオーダーでの差)違うなんてこともあります。もちろん国境線の同じ部分を計っているのにです。なぜ、国によって違うのでしょうか。
 
 うっかり国境線問題を考えると国際問題になりかねないので、問題のなさそうな海岸線の長さで考えます(こっちのが簡単で解りやすいから)。波の打ち返しで海岸線が変わっては考えにくいので、この際、海には完全凍結してもらいましょう。
 
 
 図7の海岸線の長さを測ることを考えてみます。まあ、測定方法は色々ありますが、まず思いつくのは、巻尺引っ張っていって測る方法です。金かけていいのなら、空中写真を撮って、写真の海岸線の長さを測る方法もあります。他にも色々ありますが、ここでは測量のやり方には触れません。
 
 さて、それで計った結果はどうなるでしょうか。恐らく、それぞれ異なった結果になるものと思います。これは、測定方法の問題というより、どこまで細かく測るかという分割の問題です。
 
 
 海岸線の長さを測るときには、まず海岸線を分割して測ります。道路工事の前にやっている測量を思い出すと解かりやすいでしょう。図8の青線のように分割が荒いと、長さは短めに出ますし、赤線のように分割が細かいと、長さは長めに出ます。
 
 
 海岸が砂浜だとして、更に細かく見ていくと、砂の一個一個が見えてきますので、図9の中央にある拡大図のようになります。そして、それぞれの砂に沿って海岸線の長さを測ることになります。
 
 しかし、砂の表面を更に拡大すると、図9の右にあるような拡大図になります。表面が滑らか(なめらか)に見えても、拡大すると凸凹(でこぼこ)しています。更に拡大すると、より細かいギザギザが見えてきます。そして、こういった長さを測ることになります。拡大率を上げれば上げるほど、ギザギザが色々と見えてきて、より海岸線の長さは長くなります。素粒子レベルまで拡大したら何やってるのか解らなくなります。
 
 これもスケール(尺度)の問題で、どのようなスケール(尺度)で考えているかで数値が変わってきてしまうということです。こう考えれば、隣り合う国の国境線の長さが違っているのも不思議なことではないでしょう。測定のスケール(尺度)が違っているのです。
 
5.ものの見方考え方
 今回の内容を見返してみると、我々は、自分の居る位置や目で見た世界に引きずられる傾向があります。しかし、自分の位置はもちろん、スケール(尺度)が違えば全く世界が違って見えます(だから、宇宙から地球を見せてくれと言ってる。もちろん国産の往還機で、しかもただで)。
 
 目で見えるスケールや自分の位置に引きずられると、本稿で書いたような引っ掛けにかかってしまいます。つまり、目先のことばかり考えていてはいけません。もっと広く、あるいは逆に狭く、また、近い未来から遠い未来へかけて、場合によっては過去をも見据えて(みすえて)考える必要があります。
 
 これは、一朝一夕にできるものではありません。当然、猛訓練が必要となります。そして、昔から、「知恵を巡らせ、頭を使え」といわれていますが、正にその通りだと思います。
 
平成19年11月20日
坂田 明治(あきはる)
 
 

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