第6話
 鏡の国の光子さん その二


 
「主な対象読者」
 主な対象読者は中学生以上ですが、初等幾何にどこまで慣れているか次第で、 中学生でも読める人がいるかわりに、大学生でも読めない人もいます。
 特に個人差の大きな分野です。
 
「両親へのお願い」
 初等幾何の問題を理解する力は、人によるばらつきがとても大きいので、小学生でも理解できる人もいますが、大学生でも理解できない人もいます。
 児童や生徒でも読めるように難しい漢字には「おくりかな」をつけました。
 お父さんやお母さんが子供と一緒に謎解きに挑戦してみてはいかがでしょう。
 親子で興味と時間を共有できることを期待しています。
 
 
本 文 目 次

第一章 円錐曲線三兄弟(えんすいきょくせんさんきょうだい)
第二章 だ円の性質
第三章 双曲線(そうきょくせん)の性質
第四章 放物線(ほうぶつせん)とその応用
第五章 再考からスケール拡大の必要性へ
著作 坂田 明治
 


第6話 鏡の国の光子さん その二


第一章 円錐曲線三兄弟(えんすいきょくせんさんきょうだい)
 どうも、子供を理科嫌いにする大人が増えているような気がします。「2次方程式(にじほうていしき)は使ったことがない」とか、「三角関数(さんかくかんすう)は世の中に出てなんの役にも立たない」とか、そんなことを平気でいうのはどうかと思います。本人は使ったことがなくても、こういうものの恩恵(おんけい)は受けています。例えば、飛行機で海外へ行くときの航路計算(こうろけいさん)は、球面三角法(きゅうめんさんかくほう)を基本としており、三角関数を使わなくては話になりません。夜が明けて明日がくるというのも、周期的(しゅうきてき)な変動として認めているわけですから、基本的に三角関数です。知らない間にいろいろと使われていたり、更に発展した複雑なものを用いていたりもしますよ。自分は使ったことがないから、というのではあまりにも単純で目先のスケールでしか考えてないと公言しているようなものでしょう(スケールについては、第2話「ものの見方・考え方」を読まれるとよいでしょう)。このような人達をまとめて、「理科軽視・無視大人の帝国」と呼ぶことにしましょうか(なんだか、漢字の読み書きができなくなったのや、日本語が乱れているのも、同じ理由のような気がします)。もちろん、こういう人達と「理科は苦手」という人達は区別しなければなりません(誰にでも苦手や嫌いなものはありますが、それを元に他人を批判することは絶対に避けるべきです)。
 
 理科の世界は、このような、「理科軽視・無視大人の帝国」からは想像もつかないような雄大な背景の上に成り立っています。
 
 紀元前200年頃、古代ギリシアにアポロニウスという人がおりました。円錐曲線(えんすいきょくせん)の研究をした人で、「円錐曲線論」という著作の一部が今日まで残っているそうです。円錐の切り口として、「だ円」、「双曲線(そうきょくせん)」、「放物線(ほうぶつせん)」が定義(ていぎ)づけられ、その性質が詳しく調べられているようです(ただしこれで完結したわけではなく、研究は後世に受け継がれました)。
 
 その研究があったればこそ、ケプラーは惑星(わくせい)の運行法則(うんこうほうそく)を発見できました(これを「ケプラーの法則」といいます)。簡単に説明すると、当時、惑星は太陽を中心とする円軌道(えんきどう)を描いていると考えられていましたが、実際には、観測結果(かんそくけっか)と少しずれていました。その補正(ほせい)のために円錐曲線を当てはめ、結果として、惑星は太陽を焦点(しょうてん)の一つとするだ円軌道(だ円には焦点が二つあります。後の話で出てきます)になっていることを発見しました。このような研究のやり方は今も昔も変っておりません(知られているものを片っ端(かたっぱし)から総当りで検査する方法です)。この際に、古代ギリシア人による円錐曲線の研究がなかったら、あるいは、一生を曲線探しで終えたかも知れません。
 
 そして、その後、ケプラーの法則は、ニュートン力学の威力(いりょく)を示すための実証例(じっしょうれい)となりました。これがなければニュートン力学が爆発的(ばくはつてき)に普及(ふきゅう)したかどうか解りません。実際、ニュートン力学はごく身近で盛んに使われています。例えば、建物の構造計算(こうぞうけいさん)や耐震設計(たいしんせっけい)に使われています。紀元前200年頃にアポロニウスのやった研究が、今日の生活にまでつながっているとは、雄大なスケールの話ではありませんか。本講座では、もっと直接的に、我々の周囲で円錐曲線が使われている例を扱っています(図25参照)。また、円錐曲線の性質を出すために、ベルギーの数学者G. P. Dandelin(読み方が解りません)が1822年に発表した方法を元にしています(図8と図14がそれです)。この方法が一番簡単で解りやすいと思います。
 
 
 さて、円錐とは、図1にあるような立体図形です。とりあえず図1を眺めて(ながめて)みましょう。
 
 右の方にあるものは、比較的なじみのある図形だと思います。ですが、本講座では、左の方にあるものも円錐ということにします。ここでは、ほとんどの場合、左の方にあるもので考えています。
 
 
 円錐曲線には「だ円」、「双曲線」、「放物線」の三種類があります(それぞれ図2に書いてあるような形をしています)。普通は放物線が最初にきますが、ここでは話の都合上最後です。放物線を最初に持ってくるのは、それだけの理由があって、一番簡単な式で書けるからです。これら、円錐曲線三兄弟(えんすいきょくせんさんきょうだい)は2次式で書けることから、別名「2次曲線(にじきょくせん)」ともいいます。特に、放物線は一番簡単な式で書け、取り扱いも簡単なので最初に出てくるのです。その他の曲線も、式で書いて、2次方程式や三角関数を使うと記述が簡単になり、ごりごり機械的(きかいてき)に計算するだけで性質が出てきます。ですが、あえてこの方法は用いません。計算方法に習熟(しゅうじゅく)した人や、微積分(びせきぶん)を習った人だけに限定したくないのが表向きの理由で(高校生以上に限定したくなく、中学生をも対象としたい。中学生には円錐曲線を教えないことになっているようですので、反対の意思表示です)、本当の理由は、私の個人的趣味です(これを著者特権といいます)。
 
 
 円錐曲線をその名の由来にしたがって示したのが図3です。円錐を平面で切ったときの切り口として、だ円、双曲線、放物線が現れます。双曲線を書き表す都合がありますので、円錐の上に反対向きの円錐が乗っています(これが図1の左側を円錐と呼んだ理由です)。しかも、この円錐は、無限の彼方(かなた)まで伸びています(そうしないと放物線や双曲線になる切り方ができなくなるから)。もちろん、円錐を切っている平面も無限の彼方まで伸びています。絵では有限の部分しか描けませんが、円錐も、平面も無限の彼方まで伸びていると思いましょう。
 
 こう考えると、円錐曲線の分類が簡単になりますし、視覚的にも解りやすくなります。平面と片側の円錐だけで交わっていて、切り口が有限(閉じた曲線)となるのがだ円で、平面と片側の円錐だけで交わっていて(この場合、「一つの母線と平行である」といいます)、切り口が無限(または開いた曲線)になるのが放物線、平面と両側の円錐と交わっているのが双曲線となります。
 

第二章 だ円の性質
 最初に、だ円の性質を考えましょう。「鏡の国の光子さん その一」に引き続き、距離(きょり)と長さを混同(こんどう)しています。
 
 
 通常、だ円は、「二つの固定した点からの距離の和が一定になる点の集まり」だといわれています。カッコつけていうなら、「2定点から距離の和が一定となる点の軌跡(きせき)」です。ここで、この二つの固定した点をそれぞれ焦点(しょうてん)といいます。焦点はケプラーの話のところで出てきましたね。
 
 この性質からだ円を簡単に描くことができます。図4の右にあるように、ピンを差して、それにひもで作ったわっかをかけて、ひもをピーンと張ったまま鉛筆(えんぴつ)を動かせば描けます。簡単なので、実際にやってみましょう。
 
 さて、この性質を出すには少し準備が必要です。まずは接線(せっせん)の話からおこないます。

 
 なめらかな曲線を拡大すると、だんだん直線に近く見えるようになってきます。図5に書いてある状況がそれです。要するに、微小(びしょう)スケールで見ると、曲線がほとんど直線と区別がつかなくなります。そのときに、その直線を「接線」と呼び、接線が接している曲線上の点を「接点(せってん)」と呼びます。図5をよく眺めてみてみましょう。もし、拡大鏡(かくだいきょう。虫眼鏡(むしめがね)のこと)や顕微鏡(けんびきょう)を持っているなら、紙になめらかな曲線を書いて(コンパスで円を書くといいかも)、拡大して眺めてみるとよいでしょう。
 
 なお、いつでも、接線が考えられるわけではありません。なめらかな曲線でなければどんな状況が発生するか解りません。実際、フラクタル図形の場合はこの方法ではダメです。どんな微小なスケールで考えてもちっとも状況が変らないことも起こります。もっと複雑な準備が必要になってきますので、ここでは扱いません。(この部分の内容を無理に理解する必要はありません)
 
 
 最初に、平面内で、円の接線を考えてみましょう。図6にあるように、円の外(そと)にある点から、円への接線は2本引けます。しかも、この点から接点までの距離は等しくなります。他にも接線の性質はいろいろありますが省略します。
 
 ついでですが、定規(じょうぎ)とコンパスを使って描ける図形だけに限っても、膨大(ぼうだい)な研究結果があり、とてもここでは扱いきれません。興味(きょうみ)のある人は、初等幾何(しょとうきか)、あるいはユークリッド幾何について勉強されることをお勧めします。
 
 
 次に、球で考えましょう。図7にあるように、球の外にある点から、球への接線はたくさん引けます。しかも、この点から接点までの距離は全て等しくなります。また、これらの接線を全部集めると円錐になります。後の話で使うのは、接点までの距離が等しくなることです。
 
 ここで、球とか、円錐というものは立体図形(りったいずけい)とか空間図形(くうかんずけい)と呼ばれています。なんとなく立体図形(空間図形)などと書くと解りにくい印象があるようですが、我々が目にするものはほとんどが立体図形(空間図形)です。あなたが、今こうしてこのページを読んでいるときに使っているパソコンも立体図形(空間図形)ですよ。
 
 
 図8は平面で、円錐を切り、その切り口として楕円が現れたときのものです。この平面と円錐に接するように球をおきます。すると実は、この接点がだ円の焦点になります。図4に書いてあるだ円の性質はこの図から出てきますので、興味のある方はよく眺めてみましょう(図の中に理由も書いてありますので)。
 
 
 ここからが、本章の核心部分です。2次元で考えて、だ円の線を鏡とみなしましょう(楕円形の筒状の鏡を作って、これをだ円の上に立てたと考えてもいいですよ)。これをだ円鏡(だえんきょう)ということにします。そして、だ円の焦点は二つあるので、その内の一方から光が出ているとします。すると、この光はだ円鏡で反射されて、必ずもう一方の焦点へ行きます。当然そこに何もなければ、再び、だ円鏡で反射して元の焦点に戻ってきます。図9をよく見てみましょう。
 
 いくつか補足的な説明が必要です(面倒なのでいちいち鏡という文字はつけません)。まず、だ円で反射するということから考えましょう。図5でやったように、曲線は、微小スケールで見れば直線で近似されます。その直線が接線でした。これから、曲線で反射されるということは、接線によって反射されるということになります。もちろん、光が当ったところが接点です。
 
 光が集まるという、この性質が焦点の名前の由来(ゆらい)です。レンズの焦点とよく似ていますね。なんとなく、レンズの代わりに使えそうな気がしてきませんか。
 
 それから、曲線(曲面)を作るのが大変なときは(面倒なときは)、多角形(多面体)で近似することもできます。この場合、焦点付近に光が集まるように作るのが腕の見せ所になるのですが。
 
 それでは、どうして、図9の性質が出てくるのでしょうか。もちろん、だ円を方程式で表示しているなら、ごりごり計算して出すこともできます。ですが、ここでは、そういう方法はとらない方針でした(ちなみに、数式がうまく入らないから式を使わないというのも理由のひとつです。本講座ではなんとかなりますが、先々困ったことになりそうです。何か手を考えなければならないなぁー)。別の方法で説明しなくてはなりませんね。
 
 「力で勝てないときは知恵で勝つ」というのは、昔からよく使う屁理屈(へりくつ)です。一見、だ円鏡の性質はどこから手をつけていいのか解らないでしょう。少し遠回りになりますが、視点を変えて眺めてみます。
 
 
 まず、だ円は、二つの焦点からの距離の和が一定な点の集まりでした。だ円によって、だ円の内部と外部に別れていることが見てとれます。それでは、だ円の中と外ではどうなっているのでしょうか。図10はだ円の中は、焦点からだ円の中の点までの距離の和が、一定の値(だ円を描くときの距離の和)よりも小さいことを表し、逆に外は一定の値よりも大きいことを示しています。感覚的には、焦点を結ぶ直線を描いて、その直線上で適当に点を取れば、一定の値より小さくなります。これから、だ円の中は一定の値より小さいと見当がつきます。また、外に対しては、うーーーんと遠くの点を取れば距離の和をばかでかくできますので、外の点については一定の値よりも大きくなると見当がつきます。このように、とにかく見当をつけることが重要です(この問題だけでなく他でもそうです)。そうしないと、何をやっていいのかが解りませんから。
 
 
 我々の使い慣れた方法は、「道草すると遠回り法」です。これを使ってみましょう。やり方は図11に書いてあります。結局、道草になっていることを示すために三角形を作ればよいわけです。とにかく図11をよく眺めて考えてみましょう。
 
 図11に書いてあることが解れば、だ円鏡の性質を出すのはもう一息です(でも、通常はこの一息が途方もなく遠いのですが)。
 
 
 だ円鏡での反射は接線での反射でした。ですから、最初に、一方の焦点から出た光が、接線で反射して(接点にはこだわらず、とにかく接線のどこかで反射しているという意味です)、もう一方の焦点へ行く光路を見つけます。そして、その光路上の反射点が丁度接点になっていればいいわけです。要するに、図12の接線での反射が丁度赤い線になっていればいいのです。
 
 これ、結局は「馬と川と飼葉桶の問題」ですね。接線はだ円の外にありますから、接線上の点(接点を除く)を取ると、焦点からその点までの距離の和は、だ円を作るときの一定の値より大きくなります。そして、接点のときにのみこの一定の値になります。これが最小になる場合です。ということで、距離が最小になるのが光路でしたから、接点のところで反射したものが光路となります。なんか、狐につままれたような感じですね。慣れないと解りにくい論法なので、図12を眺めながらよく考えてみましょう。
 
 納得した上で、光の性質として、「入射角は反射角」に等しいというものがありましたから、いもづる式に図12にあるような角度の関係が出てきます。
 
 まあ、これで、図9にあるだ円鏡の性質が解った(本当かな?)と思います。後でまただ円が出てきますが、一応この第二章の目的はここまでです。
 

第三章 双曲線(そうきょくせん)の性質
 今度は双曲線の性質について調べましょう。双曲線は、図13にあるように、二つの曲線からなっています。二つあることから、双(そう。二つということ)という文字がついています。(この他に漸近線(ぜんきんせん)というものもありますが、ここでは扱いません。漸近線を書き込むと絵がインチキだとばれるから!!)
 
 
 だ円は、「二つの固定した点からの距離の和が一定になる点の集まり」でしたが、双曲線は、「二つの固定した点からの距離の差が一定になる点の集まり」です。これも、カッコつけていうなら、「2定点から距離の差が一定となる点の軌跡(きせき)」です。ここで、この二つの固定した点をそれぞれ焦点(しょうてん)と言います。この辺の話は、だ円のときの「和」を「差」に変えただけですね。
 
 差について、少し書いておきましょう。ここでいう差は、大きい方から小さい方を引いたものです。もちろん、両者が等しいときの差は0です。絶対値(ぜったいち)を使うと簡単になりますが、ここでは使わないことにします。
 
 
 図14は平面で、円錐を切り、その切り口として双曲線が現れたときのものです。この平面と円錐に接するように球をおきます。すると実は、この接点が双曲線の焦点になります。図13に書いてある双曲線の性質はこの図から出てきますので、興味のある方はよく眺めてみましょう(図の中に理由も書いてありますので。ついでに、だ円の性質を出すときに使った図8と見比べるといいです)。
 
 
 大体気がついたと思いますが、だ円のときに「和」といってたものを「差」に替えると双曲線の性質で使えるものになります。そのための準備をはじめましょう。大体は同じような話になりますが、まずは図15です。
 
 今まで、「遠回り」といっていたものは、「三角形の二辺の和は残る一辺より大きい」という性質です。図15の三角形で説明すれば、AC+BC>ABという性質です。この性質が最短距離を出す基本的な性質でした。
 
 双曲線では、「和」が「差」に替わることから、今度は「三角形の二辺の差は残る一辺より小さい」という性質を使います。図15にこの説明をつけましたので、ゆっくり眺めてみましょう(あわてない方がいいです)。
 
 
 「馬と川と飼葉桶の問題」は、1点から出た光が鏡で反射して、もう1点へ行くときの最短経路を求める問題でした(「鏡の国の光子さん その一」を見直しましょう)。今度は、その逆みたいなことを考えます。「2点と直線があるときに、直線上の点で、この2点からの距離の差が最大になるのはどんなときか」という問題です(求まらないときや変なことが起きる場合もあります)。この2点が直線に対して反対側にあるとします。このときに、いつものように、片方の点を直線に関して折り返して、同じ側に持ってきます。それで、同じ側にあるその2点と、直線上の点を取って三角形を作ると、2辺の差が最大にはなりません(ACより必ず小さいから)。三角形が潰れているときに最大になります(ACの長さです)。このとき、角度は同じになります。図16の記号でいうと、角APQ=角BPQです。詳しくは、図16書いてありますので、よく眺めてみましょう。
 
 
 ただし、この問題では、直線が2点の垂直2等分線(すいちょくにとうぶんせん)になっているときは意味がありません。垂直2等分線上のどの点を取っても距離の差が0になってしまいますので。図17をよく眺めてみましょう。
 
 
 双曲線によって、平面は幾つかの部分に分けられます。だ円のときと同様にして、2本の双曲線で囲まれた部分と、1本の双曲線で囲まれた部分(2箇所ある)に分けられます。図18を眺めながら、まずは、どうなるか検討をつけましょう。2点F、Gの中点(ちゅうてん)をとれば、2点からの差は0ですから、2本の双曲線で囲まれた部分では、2点間の距離の差が一定の値(双曲線を作るときの距離の差)より小さくなります。逆に、1本の双曲線で囲まれた部分については、G点そのものになった場合を考えると、これは一定の値より大きくなります(FGはFPとGPの差より大きいから。図15の性質です)。繰り返しますが、このように見当をつけることが重要です。
 
 
 この平面を区切るときと、2点からの距離の差との関係は、だ円の場合とほぼ同じやり方で出てきます。図19をよく眺めてみましょう。ついでに図11と見比べるといいです。
 
 さて、だ円鏡のときは、図9で示したように、一方の焦点から出た光が、もう一方の焦点へ行くという性質がありました。双曲線では、焦点が、双曲線によって分離されていますので、このような性質は期待できません。では、それに代わる性質は一体なんでしょうか。とりあえず、見当がつきませんので、だ円のときにやったことと、同じことをやってみます(図12です)。
 
 
 双曲線上に、接線と接点をとって、これらの性質を考えてみます。先ほど、図18で、双曲線ではさまれた部分では、焦点からの距離の差が、双曲線を作る一定の値よりも小さいことをやりました。図20を見てみると、接線上で、焦点からの距離の差が最大になるのが接点であることが解ります。これから何が解るのでしょうか。図16を見てみましょう。角度の関係が出ていますね。従って、角FPQ=角GPQとなることが解ります。この性質は重要です。
 
 
 図21をよく見てみましょう。先ほど、角FPQ=角GPQということを出しましたが、FPを延長すると、「対頂角は等しい」という性質から、角FPQ=角SPRということが出てきます。すると、角GPQ=角SPRとなります。これは「入射角は反射角に等しい」という性質ですから、焦点Gから出た光は、双曲線鏡のP点で反射されて、PからSへ向かう方向へ行きます。一方、焦点Fから出た光で、点Pを通るものは当然PからSへ向かう方向へ行きます。目玉の位置で観測(かんそく)している人にとっては、焦点Fから出た光を観測しているのか、それとも焦点Gから出た光が双曲線鏡で反射されてきたものかの区別はつきません。つまり、「あっ、焦点が見えた」と思っても、その焦点がFであるか、Gであるかの区別がつかないことになります。これは特定の場所だけの問題ではなく、双曲線で区切られた中で観測している限り、二つの焦点のどちらからきた光かは解らないのです(もちろん、直接きたのか、双曲線鏡で反射されたのかということです)。
 
 この性質が焦点の名前の由来ですが、なんとなく焦点っぽくないですね。やっぱり、レンズの焦点みたいに光を集めてくれないとなぁー。
 

第四章 放物線(ほうぶつせん)とその応用
 いよいよ放物線です。放物線は、ものを投げたときに描く軌道が名前の由来です。そのものずばり、「物」を「放」った「線」となっていることから文字が組み立てられています。多分なじみが深いと思います。
 
 
 ですが、円錐曲線の立場から見ると、ちょっと特殊な曲線になります。図22をよく見てみましょう。小さな丸は、そこのところを中心にして回転しているという、回転の中心です。円錐を平面で切ると、最初「だ円」だったものが、一瞬だけ、「放物線」となって現れ、次には「双曲線」となってしまいます。
 
 だ円のときは、ちょっとだけ動かしてもだ円のままですし、双曲線にしても、ちょっとだけ動かしても双曲線のままです。しかし、放物線のときは、ちょっと動かしても、だ円か双曲線になってしまいます。丁度、だ円から双曲線に変る中間段階として一瞬だけ姿を現しているのです。不思議ですね。
 
 そう考えると、放物線は、だ円と双曲線の性質の両方を持っていると期待できます。結果が当っているかどうかはともかくとして、まずは予想を立ててみることが重要です。
 
 
 図23は、今までの考察を踏まえて、うまく片方の焦点とだ円の端の点が動かないようにして、もう一方の焦点を無限の彼方に持っていったときの図です。当然、二つの焦点からの距離の和をどんどん大きくしていきますが、これはうまく調整されてといるものと考えましょう。
 
 動かさない方の焦点から出た光は、だ円鏡で反射されて、もう一方の焦点へ行きます。この焦点がどんどん遠くなると、だ円鏡で反射した光は平行線に近づいていきます。そして、焦点が無限の彼方に追いやられてしまうと、平行線になってしまいます。これは、交わっている点が無限の彼方に行ってしまったため交われなくなるからです(平面上で交わっていないときに平行というのでしたね)。
 
 
 さて、一方の焦点が無限の彼方に追いやられてしまったのが放物線でした(図22を見てみましょう)。これから、放物線は、平行な光がくると放物線鏡で反射して、焦点に集まるという性質が出てきます。図24をよく見てみましょう。なお、正しくは対称軸(たいしょうじく)に平行な光がきた場合ですが、ここでは細かいことにこだわりません。
 
 平行線を延長してみましょう。図24の青い線がそれです。そうすると、「入射角と反射角は等しい」という性質と、「対頂角は等しい」という性質から、図24に書いてある三つの角は等しくなります。あれ、これ、どこかで見た覚えが。
 
 そうです、図21のところで全く同じ話が出てきましたね。図21の左にある焦点を無限の彼方に追いやった場合そのものです。
 
 なるほど、図22で双曲線との関係を見れば、確かにその通りだと解ります。みごとに、だ円と双曲線の両方の性質を持っていました。期待通りですが、不思議なものですね。
 
 ところで、放物線鏡を使えば、光を焦点に集められますので、レンズの代わりに使えそうな気がしてきませんか(前にもこの台詞が出てきたような)。
 
 
 図25は身近に使われている放物線の例です。パラボラアンテナや懐中電灯などに使われています。衛星放送の受信アンテナも、多分パラボラアンテナだと思いますが、電波を受けるところの位置が少し下の方にずれているので、なんらかの工夫があると思われます(面が正確に衛星の方に向いてないのかな)。
 
 
 図26はパラボラアンテナの断面です。正しくは、中心軸(ちゅうしんじく)を含む断面です。先ほどからやっているように、断面が放物線なら、反射した光や電波が丁度焦点の位置に集まりますので、この焦点の位置に受光器を置けばばっちりです。
 
 光を集めるといいのは、暗いところ(光が少ない)よりも、明るいところ(光が多い)の方がよく見えるからです。
 
 まあ、そうはいっても、実際に放物線を元にした面を作るのは難しいので、多面体で近似しています。これでも、大体、焦点のあった位置の近くに光が集まりますので十分使用に耐えますよ(作る方の腕次第ですが)。
 
 
 パラボラアンテナよりも、もっと身近な例は懐中電灯(かいちゅうでんとう)です。誰でも一度は開けて中を見たことがあると思います。懐中電灯の反射板(はんしゃばん)の断面も放物線です(ただし、安物はどうだか知りません)。これも、反射光を平行線として前に出せるので、効率よく前方が照らせます。もちろん、多面体で近似してあるものもたくさんあります。
 
 これで、古代ギリシア人の研究が我々の身近で使われているとお解りになったでしょう。「理科軽視・無視大人の帝国」には入りたくありませんね。
 

第五章 再考からスケール拡大の必要性へ
 さて、ここで今までのことを振り返ってみましょう。円錐曲線には、「だ円」、「双曲線」、「放物線」の3種類がありました。しかも、図22を眺めると解りますが、だ円から放物線、そして双曲線へと変化していきました。もちろん逆方向に変化させても問題ありません。
 
 また、放物線は、だ円と双曲線の両方の性質を持っていました。これはどういうことでしょうか。放物線は、だ円と双曲線の橋渡し(はしわたし)をしていると考えてよさそうです。すると、焦点が無限の彼方に追いやられたときに、ここでなにかが起こって、そしてだ円から双曲線へ変化していると考えられます。
 
 しかし、残念ですが、我々が今まで扱っていた空間はユークリッド空間というもので、無限の彼方を扱えません。ということは、スケールを拡大して、無限の彼方を取り込んだ空間を考える必要があるということです。そうすれば、そこで、円錐曲線がその正体を現すと期待できます。
 
 実際、射影空間(しゃえいくうかん)というものが無限の彼方を取り込んでおり、そこで考えれば円錐曲線の実体が明らかになります。実は、内緒ですが、円錐曲線は「三兄弟」ではなく、「三面怪人」なのです。
 
 射影空間は準備が色々と必要ですので、ここでは扱いません。その代わり、無限の彼方を取り込む試みの一部を紹介しておきます。
 
 
 美術の授業で、透視法(投資法ではありません。念のため)というのを習ったことがあるかと思います。図28は一点透視法による町並みと道路を書いたものです。道路の両端や建物の窓などは本来平行なはずのものですが、一点で交わっているように書かれています。これは、平行線は無限の彼方で交わっており、それがキャンバスに持ってこられていると考えてよさそうです。無限を取り込む一つのヒントになっています。
 
 試みとしてはこのような感じです。いまは無理でも、いつの日か、射影空間やその上の幾何(射影幾何(しゃえいきか)といいます)を扱えるようになるかもしれません。
楽しみですね。

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平成19年1月20日
坂田 明治(あきはる)
 

 

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