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56.食品製造に新安全性確認システムの導入が
   高まる.8-12-97.



その1.

 食品やその素材の細菌やウイルスによる汚染について、別項目45番の「細菌は食品の品質を評価する」と49番の「ウイルスによる食品汚染と品質評価」で簡単に説明しました。病原性大腸菌O157やサルモネラ菌による食中毒が多発してから、食品メーカーや外食・給食産業などの細菌汚染に対する気配りは大変なものであるようです。当該企業は別にして、一般消費者にとっては大歓迎すべき現象と私は思っています。

 いままでも各企業は、食中毒などをお越し、会社の信頼と伝統にドロを塗らぬよう、さらに消費者にも迷惑をかけないように、それなりに注意を払ってきています。しかし、基本的な事柄が理解されてないと、無駄な経費とエネルギーを使うことになることが多いと思います。

その2.

 私が個人的に見聞きした代表的な事例の一つを、少し飛躍させて面白オカシク紹介しましょう。これは、フィクションです。かなり高価だかよく売れているドリンク剤を製造する企業の開発担当者と衛生管理者が来られて、「商品流通を改善するために新たに開発した新包装法を採用したら、雑菌混入などによる不良品がとたんに多くなって困っている」と社外には秘密である現状を説明した。結果として、何をどのようにしても全く改善されない。しかし、とても意外な話だが、様々な原材料を調べたら「シリコン原液」が雑菌によって汚染されている事を斜内の検定室で突き止めた。シリコン製造会社に雑菌混入のないシリコンの納入を依頼した。ところが相手は、「シリコン液中で細菌が増殖する事は絶対にあり得ない」と自社製品のシリコンがドリンク剤の細菌汚染の原因かとの考えに強く反対し、どうしても我が社の問題を聞き入れてくれない。八方フサガリで手のつけようがないので、相談に乗ってくれとのことであった。これに似た問題はよく相談を受けます。

その3.

 その「シリコン原液」は、意外にも私が検査しても確かに相当多い細菌が検出され、細菌汚染か証明されました。シリコンを製造する化学会社では化学製品の無菌化の対応は難しいと考えたので、購入したシリコン原液をフィルターで濾過をして無菌にして使う事をすすめた。結果としては、ドリンク剤の細菌汚染に関して何も改善されず、私の提案は役に立たなかった。その後、本格的に原因追及を開始した。シリコンの細菌汚染以外に、最終混合タンクにつながる金属管のバルブからの殺菌混入の可能性が浮上した。しかし、これも決定的な意味をなさなかった。

その4.

 従業員の手を徹底的に洗わせ、トイレに行く回数も記録する事をすすめた。手を洗っても洗ってもワンロット数億円もする製品が自家検定で続々と落ちるのには変化がみられなかった。

 最後に判った事は、洗面所に備え付けの「手洗い用洗液」が雑菌を人から人へと拡散させる犯人であった。手をいかによく洗っても、手をキレイにするために手にヌル「手洗い用洗液」が雑菌の繁殖液であった。

 「手洗い用洗液」は、購入した原液をまず水道水で適当な濃度に薄め、それを洗面所のプラスチック容器に詰めて皆で使う。洗液が少なくなるとまた足して使う。プラスチック容器は壁に取り付けてあるので洗えない。一度雑菌が繁殖しだすと、パン種用酵母のように、洗液を足すことによって栄養が補給されるため、いくらでも増え続けていたのです。5番の「手洗い洗浄液で手に細菌が付く?」と6番の「シャンプーの細菌汚染」を参考までに読んでみて下さい。

その5.

 食品メーカーや外食産業が病原性大腸菌騒動を契機に、HACCP(ハセップ)と略称される技法の導入を進めているようです。 HACCP(ハセップ)とは、Hazard Analysis and Critical Control Pointsの略で、製造過程総合衛生管理法とでも訳されるべきシステムです。

 1960年代の米国航空宇宙局NASAでは、予期せぬ諸問題が派生した。カター大統領は、フーバーの法則の導入を奨励した。数年前に日本国内で「フーバーの法則の本」が売れたことがありましたので、この法則のことは記憶にあると思います。ハセップは、宇宙食を細菌学的に安全に製造するためにNASAで開発され、原材料の調達から最終製品の出荷と保管までの全工程を対象とした食品の安全性確保システムです。各工程ごとに予想される汚染源と検査するポイントを設け、管理基準や監視方法、基準値を超えたケースの対処法などを事前に確保し、最終段階での汚染食品をゼロにするのが基本的な考えです。米国では食肉加工業界で採用を義務化しています。

 日本国内では、ハセップの認定を農林水産省と厚生省が管轄するようですが、国としての認定基準がまだ決まっていないようです。しかし、食品メーカーや外食・給食業界てでは、臨床検査センターなどの協力を得て独自のHACCPの手法を導入し、衛生管理の強化を進めているようです。

 O157騒動も、感染した人や当該事件の当事者には申し訳ないけれど、社会全体からみると人のために少しは役にたっているようです。「雨降って地固まる」のたとえのようになる事を期待しています。

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