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78.便秘とヨーグルト.  2-19-98.

  パート−1.老衰を防ぐには

 日本は世界一の長寿国で、百歳を超える元気なお年寄りが数千人になったようです。ただ長生きをすれば良いのではなく、元気で年を重ね静かに一生を閉じたいと願っていることは、昔も今も同じと思います。

 百年程まえのロシア人でメチニコフ(1845-1916)という名前のノーベル賞を受賞した科学者がいます。フランスのパリにあるパストゥール研究所の部長も勤めた免疫学の大家でした。個人的には、少し風変わりな天才で、何にでも興味を持ち研究した人であります。 このメチニコフは、ある日「老衰を防ぐにはどうするか。その原因はなにか」と考えました。老衰の原因は、動脈の硬化であって、動脈硬化の原因はアルコールであり、また梅毒だと考えました。丁度その時、パストゥール研究所のルー博士が莫大な賞金(百万フラン)を授与され、またメチニコフ個人もロシアの富豪から大金の寄付金(三万五千フラン)を贈られました。二人は相談して、その莫大な賞金全部を梅毒の原因と動脈硬化の予防の研究に提供することにしました。

 梅毒の予防についての研究は、それなりの成績をだせましたが、ここではこれ以上に触れないことにします。次にメチニコフは、動脈が硬化するのは自家中毒によるとの仮説を考え付きました。

  パート−2.メチニコフの仮説

 メチニコフの仮説は、「腸内の細菌は自家中毒の原因となる毒を作る、人は大腸を切り取っても生活することができる、大腸はこのような毒を作る細菌の住みついているところである」ということから導きだされました。この仮説を説明したら、たちまち反対論がだされました。「象のように巨大な大腸をもっている動物でも長寿である、人類は大腸があっても地球上で最も長命を保った生物の一つである」という反論でした。

 メチニコフもこの反論には困ったようです。しかし、そこは天才のメチニコフです。ブルガリアの住民には百歳以上の長寿者の多いことを耳にして、小躍りして喜んだようです。また新しい発想が生まれました。

  パート−3.便秘とヨーグルト

 メチニコフは、ブルガリアには百歳を超える元気なお年寄りが多いことと、彼等はブルガリア菌と呼ぶ細菌で作ったヨーグルトを毎日好んで飲んでいることを確認しました。

 このブルガリア菌で作ったヨーグルトこそ、大腸内の細菌の繁殖を防ぎ、自家中毒を防ぐ原因であると信じ込み、このヨーグルトを毎日飲む事を奨励しました。と同時に啓蒙のみでは効果を確認するのに時間が掛かるので、彼は自らヨーグルト製造会社を作って、製造と販売を開始しました。彼自身も、またこのヨーグルトを毎日大量に飲用しました。そうしてメチニコフは、当時としては珍しく長生きをし71歳で生涯をまっとうしました。

 このメチニコフの考えを少し展開すると、便秘は命を縮めることを意味します。便秘の原因は色々とありましょうが、便秘だと便が出ないのですから、大腸に細菌を含む未消化物が長時間溜まっていることになります。

 世の中には、便秘の人は意外に多いようです。慢性の便秘に悩んでいる人でなくても、一寸旅行に出かけた時、他人の家やホテルに数日泊まった時、その他日常と一寸違ったことがストレスとなり、その時だけ便秘になる「キガネ便秘」になる人は、多いのです。 牛乳を飲むとお腹が痛くなる人も日本人には多いですが、ヨーグルトを飲んで下痢をする人は少ないと思います。百年前のメチニコフの薦めを一寸試してみるのも悪くないかも知れません。

  パート−4.長寿の秘訣

 さて、金さん、銀さんを含め元気なお年寄りをみると、テレビなどのマスコミの取材記者でなくても、長生きの秘訣を聞いてみたくなります。その秘訣を実行して自分も元気に年を取りたいと願うものです。

 日本人の平均寿命は、世界で一番長くなってしまいました。この長寿の秘訣はなんてしょう。我々の先輩達は特別な秘策があり、一致団結して何か特別な努力をした賜物なのでしょうか。平均寿命が50才代の国は今でも世界中では多いようです。世界保健機構WHOがまとめている報告書を調べれば、世界各国の平均寿命はすぐに分かると思います。国により、また地域により平均寿命は違うようです。国内では、沖縄県に長寿の人が多いようです。

 さて、長寿の人に長寿の秘訣を教えて貰おうと思っても、なにも特別な事は聞けないのではないかと私は思っています。なぜなら、平均寿命が短い地域または国には、短い理由ががあると思います。例えば、戦争・内戦とか、経済的な貧困、衛生施設の不備、医薬品の不足、その他が切実な問題である国と日本のような国とでは、平均寿命が違うと思います。

 パストゥールが病気の原因を細菌と考え出した頃、10人の赤ん坊が生まれると、一人から二人の母親が産辱熱で命を落としていました。子供を産むのも命懸けであった時代でした。

 国民全体としての平均寿命を長くできれば、個人の寿命も長くなる筈です。長寿の秘訣は、逆説的に考えて短命な人達の短命な原因を調査すれば自然と解って来ると思われます。エイズ・戦争や交通事故による若者の死亡、過酷なストレスによる過労死、栄養不良による乳幼児の死亡、非衛生的な環境からの感染症の多発、コレステロールの多い物やアルコールの暴飲暴食による健康障害、塩分・残留性の高い化学物質の摂り過ぎ、国会に喚問されたり特捜部での事情聴取を受けるなどなどが、平均寿命を短くする要因と思います。

 赤ワインも健康に良いのかも知れませんが、それ以上にゆっくりと時間をかけて楽しく飲むことの方がより健康によいのかも知れません。曖昧模糊に以前掲載した「42.トイレの臭気が気になりませんか?、 43.フランス人のお弁当、44.赤ワインと緑茶の効用」なども参考までにお読み下さい。

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